最新記事

2016米大統領選

クリントン氏がミシガン州でまさかの敗北、貿易自由化問題が今後リスクに

外国企業との競争に疲れ果てた有権者の怒りが、サンダース氏に有利に働く

2016年3月10日(木)19時18分

3月9日、米民主党の大統領候補指名争いは、8日に行われたミシガン州の予備選でヒラリー・クリントン前国務長官がバーニー・サンダース上院議員に予想外の敗北を喫する事態が起きた。写真はクリントン氏(右)とサンダース上院議員。フロリダ州で撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

 米民主党の大統領候補指名争いは、8日に行われたミシガン州の予備選でヒラリー・クリントン前国務長官がバーニー・サンダース上院議員に予想外の敗北を喫する事態が起きた。貿易自由化の痛みに対する地域の有権者の怒りが反映された形で、この問題がクリントン氏にとって今後リスクになる可能性が浮上してきた。

 クリントン氏が、民主党候補の大本命であることに変わりはない。しかし今回の結果は、「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれるオハイオ州などの他の中西部・北東部地域の予備選でも苦戦に陥る恐れがあることを示唆している。それに伴って貿易をはじめ経済の分野では一段とリベラル色を強めざるを得なくなり、副大統領候補の選定にも影響が出てくるかもしれない、というのが専門家の見方だ。

 民主党の候補指名をクリントン氏が獲得したとしても、共和党の候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏と、恐らく対決しなければならない。そのトランプ氏は、現在のさまざまな国際貿易協定を廃止し、米国の労働者を外国との競争から守ると公約している。

 ホライズン・インベストメンツの政治アナリスト、グレッグ・バリエール氏は「現時点で自由貿易への支持を表明することが、政治的に妥当かどうかは微妙だ」と話す。

 民主党のストラテジスト、スティーブ・ジャーディング氏は、クリントン氏が党内左派や白人、労働者層などとうまくいっていないことから、副大統領候補にはオハイオ州選出のシェロッド・ブラウン上院議員などの自由貿易懐疑派が起用される可能性があるとみている。

 これまで副大統領候補には、中南米系などのマイノリティをより取り込むためにカストロ住宅都市開発長官などが選ばれるとの見方が出ていた。

 サンダース氏は自ら民主社会主義者と名乗り、トランプ氏は大富豪と立場はまったく異なるが、いずれも貿易自由化への国民の反感をてこに選挙を戦っており、北米自由貿易協定(NAFTA)などの取り決めが米国から雇用を奪って労働者の生活水準を引き下げたとの批判を展開している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中