最新記事

東アジア

中国は北朝鮮をめぐり、どう動くのか?

2016年1月13日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

もう止められない? 北朝鮮に対する中国の抑止力が幻想だったとしたら Kim Kyung-Hoon- REUTERS

 北朝鮮が水爆実験とする核実験を行って以来、中韓首脳間の電話会談は行われていない。昨年末の日韓外相会談が影響しているからだ。中国は日米韓ブロックに対して今後どう動くのか?中朝間ジレンマを含めて考察する。

中韓蜜月関係は終わった

 習近平政権誕生以来、習近平国家主席は朴槿恵大統領を抱え込もうと、中韓蜜月関係に向かって邁進してきた。特に北朝鮮訪問前に韓国を訪問したのは、中華人民共和国建国以来、初めてのことだ。

 しかし、そこまでした中韓接近は、昨年末の日韓首脳会談で終わってしまった。

 昨年12月28日付の本コラム「日韓外相会談により中国の慰安婦問題は困難に――今後の日中関係にも影響」にも書いたように、日韓の間で慰安婦問題に関して一応の「決着」を見たことによって、中国としては韓国とともに対日歴史共闘を戦えなくなってしまったからだ。

 中国としては、この時点で「韓国は、結局は日米側を選ぶのか」という不快感を強く抱いている。

 中国政府系香港メディアの鳳凰網は、日韓外相会談の翌日にすぐに(大陸の)ネット上の民意調査を始めた。

 それによれば、「日韓が仲直りしたが、中日も同じように仲直りすべきか?」という質問を投げかけている。

 この質問に対して90.26%のネットユーザーが「アメリカは日韓関係改善を促進させることによって中国を孤立させようとしているが、中日が仲直りすることは困難だ」としている。

 このことからも推測できるように、日韓関係改善は「中国を孤立させる役割を果たした」と中国側は思っているのである。アメリカに言われれば、結局は「日本になびく韓国、パククネ大統領」に中国は苦々しい思いをしている。

 韓国側としても、中国が北朝鮮に「影響力を持っているはずだから、核実験の抑止力として働くだろう」という期待を中国に抱き、また「いざ北朝鮮からミサイル攻撃をされたら、助けてくれるのは、すぐ隣にいる中国にちがいない」と期待していたにちがいない。

 しかし中国は北朝鮮の核化に関して、いかなる抑止力も発揮できなかったことが判明した。

 韓国としては、中国に頼っていてもしょうがないと思ったに違いない。

 その微妙な心理を読みこんだのか、アメリカのB52爆撃機が、韓国上空を低空飛行した。米韓の戦闘機も随行。これはアメリカが「いざとなったときに韓国を守るのは、中国ではなくてアメリカだ」ということを、韓国に思い知らせたシグナルとして中国の目には映った。韓国の戦闘機も随行したことは、中国にとっては決定的だっただろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

電気・ガス代支援と暫定税率廃止、消費者物価0.7ポ

ワールド

香港火災、死者128人に 約200人が依然不明

ワールド

東南アジアの洪水、死者161人に 救助・復旧活動急

ワールド

再び3割超の公債依存、「高市財政」で暗転 25年度
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中