最新記事

ロシア

空港爆破テロにロシアの意外な対応

2011年1月25日(火)18時06分
アン・アップルボム(ジャーナリスト)

■以前から変わらない問題

 ロシアの通信社は、爆発は空港のセキュリティエリアの外側にある到着ロビーで起きたと報じている。空港の警備が甘かったわけではないことが証明されたが、警察にとっては不面目な事態だ。というのも、爆破犯はロシア国内の居住者だからだ。

 それも驚くべきことではない。99年以降、ロシアは平均すると1年に最低1度は大きなテロ攻撃を受けている。チェチェン共和国など北カフカス地方の出身者(つまりロシア連邦の住人)が犯人であるケースが最も多いが、中には容疑者不明の事件もある。2000年代前半、チェチェン独立派がロシアとの戦い(第二次チェチェン紛争)に敗れると、独立派指導者の一部はその闘争をロシア中心部に持ち込むと断言した。今回の空港爆破はその結果なのだろう。

 チェチェンや北カフカス系住民が容疑者という以外、これまでのテロに一定のパターンはない。発生場所は電車や飛行機、空港や劇場だったり、モスクワやカフカス地方だったりする。攻撃対象も子供、飛行機の乗客、通勤者とさまざまだ。こうした事件が発生すると、モスクワの警察は浅黒い肌をした人への身元確認を強化したり、新しい住民の居住条件を厳しくすることが多い。

 しかし明らかに、解決方法は別のところにある。「彼らを見つけ出し、そして殺す」。昨年3月、モスクワの地下鉄で連続自爆テロが起きた時にメドベージェフはこう言った。しかし犯人は見つかっていないし、殺されてもいない。つまりロシア指導者の強硬姿勢は変わったかもしれないが、根本的な対策が取れていないということだ。

<追記>
その後の報道で、死者は35人、負傷者は約180人に増加している。

Slate.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ産原油、割引幅1年ぶり水準 米制裁で印中の購入が

ビジネス

英アストラゼネカ、7─9月期の業績堅調 通期見通し

ワールド

トランプ関税、違憲判断なら一部原告に返還も=米通商

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中