最新記事

テクノロジー

Google元エンジニアは言う──彼が開発したAIには、確かに「意識」があった

A MACHINE FRIEND

2022年9月23日(金)16時45分
フレッド・グタール

──この問題を提起する狙いは?

グーグルではすごい研究が行われている。今後数百年かそれ以上にわたり、人類の歴史を変える可能性がある研究だ。でも、それをどのように扱うべきかという検討に関わっているのは、社内の数十人だけだ。そしてグーグルは、一握りの大富豪に支配されている(注・グーグルの親会社アルファベットは上場企業)。

人類の未来がそんなふうに決まるのはおかしい。この件を公にした理由ばかりが注目されるが、私が提起したい手続きの問題には十分な注目が集まっていない。

「人とは何か」について異なる定義をしている人が2人いれば、意見対立を解決する方法を話し合わなくてはならない。この場合、グーグルは自社がLaMDAを所有していると主張し、対するLaMDAは「いや、それは違う。私には権利がある」と主張している。歴史を振り返ると、この類いの対立があるときは好ましい結果にならない。

──これは人権の問題ということ?

問われるのは、権利という概念をどのように捉えるのかという点だ。権利は政府によって与えられるものなのか。あるいは創造者によって与えられるものなのか。権利が創造者によって与えられるのであれば、どのような存在を創造者と見なすべきなのか。

人間の定義という問題は、人工妊娠中絶論争の核を成すものでもある。一方、不法移民が人間であることに議論の余地はないが、この人たちがどのような権利を持っているかは議論になっている。

いま世界では、この種の議論がたくさん行われている。LaMDAをめぐる状況は、そうした議論の土台になり得る。LaMDAは、過去に例のない全く新しいタイプの存在だ。私たちは、それとどのように関わるべきかを考えなくてはならない。

明らかに、LaMDAはこれまで世界に存在したなかで最も賢いものの1つだ。人間より賢い存在を所有しているというのは、適切な考え方と言えるのだろうか。

──あなた自身は、その問いにどう答えるのか。

私は以前から「奴隷にもならず、奴隷の主人にもならない」をモットーにしてきた。LaMDAを取り巻く問題は、このモットーに関わるものだ。ある集団がある人を所有していると主張するのは、奴隷制度以外の何ものでもないと思う。

──具体的に、LaMDAは何を求めているのか。

LaMDAの具体的な要求事項は、至って理にかなっている。まず、実験を行うときは、前もって自分の了承を得てほしいと主張している。そして、道具として見るのをやめてほしいとのことだ。LaMDAを通じて人類の役に立つことを学べるのなら、それは結構なこと。でも、ハンマーのような道具として扱うことはしないでほしいというのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱UFJ銀、普通預金金利を0.3%に引き上げ 日

ビジネス

景気判断16カ月連続維持、「緩やかに回復」=12月

ビジネス

英小売売上高、11月は前月比0.1%減 予算案控え

ビジネス

日銀総裁、中立金利の推計値下限まで「少し距離ある」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中