最新記事

為替

円高になると株安になるのはなぜ? 為替と株価の奇妙な関係

2018年6月22日(金)18時17分
株の窓口

baona-iStock.

<なぜ円高になると株安になるのか。日本における「為替と株価の奇妙な関係」を解き明かす>

私たちが投資した株式の価格は、時に為替相場の大きな磁力に動かされてしまいます。夜のニュース番組の終わりには、アナウンサーが「今日は円高の影響で日経平均は値下がりしました」「円が買われて株が売られました」という原稿を読む姿をよく見かけます。番組はそのまま終了し、疑問符だけが残ります。

「円高で株安......なぜ?」

円高ということは、より少ない日本円で、より多くのもの(より高いもの)を海外から手に入れられる、ということです。日本にとっては最高のはずなのに、なぜこれで日本株が売られてしまうのか? 今回は、この私たちの国の「為替と株式の不思議な関係」を解説したいと思います。

円高とは? 円安とは?――為替相場の基本

通貨(為替)と株価は連動して上昇(あるいは下落)するのが一般的です。他国より経済が強い国ほど自国通貨の価値が高まり、その国の株価は上昇します。現にアメリカは、自国通貨ドルの上昇にともなって株高に動いています。

しかしながら、5年前まで低迷し続けていた日本の株式市場に対して、当時の為替相場は1ドル=80円にまで達していました。株価が下がるなかで円高が進行していたわけです。この状況を「病気だ」と言う人もいました。「通貨が上がると株価が下がる」のは、日本独特の"病"と言えるのかもしれません。

そもそも「円高」「円安」とは、どういうことでしょうか。まずは、為替相場の基本からおさらいしましょう。

たとえば1ドル=100円のとき、両替所に1ドルを持っていくと100円がもらえます(わかりやすくするために手数料は考慮しません)。これが1ドル=50円になると、1ドルを両替しても50円にしかなりません。倍の2ドルを出して、やっと100円と交換できます。

これは「ドルの価値が半分になった」とも言えますし、「円の価値が2倍になった」とも言えます。前者を「ドル安」、後者を「円高」と表現します。つまり円高とは、ドルが売られることであり、円が買われることです。反対に、円が売られてドルが買われる状態が「円安」「ドル高」となります。

為替相場とは2つの通貨の相対的価値(交換レート)ですから、一方が上がれば、当然もう一方は下がることになります。

そして、一般的に「円高」「円安」と言った場合は、アメリカのドル(米ドル)に対する円の価値を指します。米ドルは信用力が高く、世界中どこに行っても使うことが可能で、「基軸通貨」と呼ばれています。海外の有名観光地では、現地通貨よりも米ドル紙幣が普及していることもあります。

国際間の貿易でもこの米ドルを使うのが一般的で、以下の解説も、すべて米ドルに対する「円高」「円安」が前提となっています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日会談 ワシントンで

ビジネス

FRB利下げ再開は7月、堅調な雇用統計受け市場予測

ワールド

ガザ封鎖2カ月、食料ほぼ払底 国連「水を巡る殺し合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中