海運の要・パナマ運河を気候変動が直撃、16億ドル巨大ダム計画が「危うい」深刻な事情

2024年12月8日(日)17時34分

10月にロイターのインタビューに応じたパナマ運河庁のイリヤ・エスピノ・デ・マロッタ副長官は、「リオ・インディオ川ダムプロジェクトは、今後50年のための最も完璧な(干ばつ)対策になる」と語った。

プロジェクトはまだ長期にわたる承認プロセスを控えている。市民からの意見公募と閣議を経て、最終的にゴーサインを出すのは国会だ。

パナマのムリーノ大統領は議論を来年には終わらせると述べているが、このところ、複数の主要プロジェクトで遅延や中断が生じていることから、海運業界は若干の懸念を抱きつつ注視している。たとえばカナダのファースト・クォンタム・ミネラルズとの鉱山開発契約が紛糾した件では、社会的な反発が広がったことで、最高裁判所は昨年、この契約が違憲であると認定し、政府が鉱山の閉鎖を命じるに至った。

ダム建設のために退去を余儀なくされる住民の数は比較的少ないものの、「カントリーメン・コーディネーター・フォー・ライフ」という活動家団体の支援を受けている。ファースト・クォンタムの鉱山開発契約の阻止でも活躍した団体だ。

新興市場諸国に特化したバンクトラスト投資銀行で上級エコノミストを務めるセザール・プティ氏は、ダム建設プロジェクトはパナマ国内において政治的合意を得ているとはいえ、政府としては、退去対象となる住民や影響を受ける近隣住民に向けて信頼性の高い補償計画を定める必要があると話している。

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