最新記事

BOOKS

ルイ14世の失敗とリーマン・ショックは「よく似た話」

Reading "The Reckoning"

印刷

 日常的に数字と縁遠い立場からすれば、それを意識することはあまりないかもしれない。だが、古代から現代に至るまでの会計のあり方を時系列的に追った本書を読み進めると、その重要性、特に会計と権力との関係性がわかってくる。そしてポイントは、これが会計や帳簿をモチーフとした「歴史書」だということ。いわば会計や帳簿をスパイスと位置づけながら、歴史というストーリーを楽しめるわけだ。

 しかし、だからこそ、世界経済が「ストーリーを楽しめる」などと呑気なことをいえる状況にないことがはっきりわかるのもまた事実。古代の話題は自分の生活に関係のない昔話のように思えもするが、決してそうではなく、つまり歴史が"線"としてつながっていることが、特に第13章「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」を読むとよくわかる。その挙句に終章で「経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている」などといわれると絶望的な気分にもなるが、だからこそ、「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」という事実から学ぶべきことがあると、著者は締めている。


会計が日常生活から切り離された結果、人々の関心は薄れ、多くを期待しなくなってしまった。(中略)いつか必ず来る精算の日を恐れずに迎えるためには、こうした文化的な高い意識と意志こそを取り戻すべきである。(336ページより)


 それを「原点回帰」ということばに置き換えるのは安直かもしれない。が、忘れかけていたことを思い出す必要がある時期に私たちがいることは事実だ。そして本書は、そのためのきっかけを与えてくれるだろう。



『帳簿の世界史』
 ジェイコブ・ソール 著
 村井章子 訳

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2024.4.30号(4/23発売)

特集:世界が愛した日本アニメ30

2024.4.30号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

エンタメ 世界が日本アニメを愛する理由
代表作 世界を変えた日本アニメ30
解説 なぜ日本マンガが北米で空前の人気に?
追悼 「鳥山明ワールド」は永遠に
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース