最新記事

疑惑

VWがディーゼルエンジンに仕掛けた「不正ソフト」とは

排ガス規制の試験走行時だけクリーンディーゼルを実現する魔法の実態

2015年9月24日(木)15時34分

9月21日、独フォルクスワーゲン(VW)は、米国で販売したディーゼル車の一部で、排ガス規制の試験を突破するため不正なソフトウエアを使用していたことを認めた。写真は同社のディーゼルエンジン。チューリヒで22日撮影(2015年 ロイター/Arnd Wiegmann)

[21日 ロイター] - 独フォルクスワーゲン(VW)は21日、米国で販売したディーゼル車の一部で、排ガス規制の試験を突破するため不正なソフトウエアを使用していたことを認めた。米当局は同日、他の自動車メーカーにも調査を拡大すると発表した。

以下にディーゼルエンジンについて、また、米環境保護局(EPA)とカリフォルニア州の排ガス規制に対する不正を回避するためVWが使用したとされる不正ソフトウエア「無効化機能」についてまとめた。

<ディーゼルエンジン>

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べて圧縮圧力が高く、燃料は点火プラグがなくても自然着火し燃費が良い。しかし、オイル、空気、燃料フィルター交換の回数が多くなる。

<ディーゼル燃料>

石油製品の1つでガソリンと比べて精製度が低く、熱効率が高い。価格もガソリンより安価だが、米国では現在ガソリン価格を上回っている。

<経済的なディーゼル車>

ディーゼル車はガソリン車よりも最大3割程度燃費が良いとされ、ハイブリッド車よりも経済的になり得る。

<排気ガス>

ディーゼル燃料はガソリンよりも重く、黒煙を排出するため汚染度が高くなることがる。排出されるのは主に有害物質の窒素酸化物(NOX)であり、一酸化炭素や二酸化炭素(CO2)や炭化水素の排出量はガソリンよりも少ない。

<汚染制御システム>

自動車メーカーにとって、NOXの排出をいかにコントロールするかが大きな課題であり、欧米の厳しい基準を満たすために排気ガスに尿素水を吹きかけてNOXを低減させるなどの汚染制御システムが採用されている。

<VWの「無効化機能」>

VWの自動車に搭載された電子制御装置内の排ガス抑制を「無効化」する不正ソフトウエアは、試験走行時にはEPAの定める排ガス規制に適合するように、また通常走行時にはエンジン性能を最大化するため排ガス低減装置の一部もしくは全部を無効化するように切り替わる。

EPAによると、同ソフトはステアリング操作やスピード、エンジン持続時間や圧力などの要因を分析し、試験走行なのかを「正確に」判断するという。

(出典:CarandDriver.com;Carsdirect.com;Dummies.com, AutoRepair For Dummies, 2nd Edition)

120x28 Reuters.gif

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中