「おいしいものは口福を運ぶ」 パリ初の松花堂弁当専門店オーナーが語る新境地

料理の背景を伝える――味を深めるコミュニケーション
團の松花堂弁当は、実はプラスアルファがある。お弁当の前に、小鉢、小皿、蒸し物の3品が付き、最後にデザートも出てくるのだ(全部で48ユーロ、約9,000円)。パリの平均的なランチ定食より少し値は張るが、このボリュームと味なら決して高くないのではないか。
オープンして半年ほどで、リピーター客が非常に多いというのも納得だ。私も実際に食してみて、たいへん好感をもった。久しぶりにハイレベルな和の味を体験したため、張り切って自分で和のおうちごはんを作ったり、スイスの和食レストランで食事しても、つい比較してしまい、「團の松花堂弁当コースが恋しい」とさえ感じてしまう。
松花堂弁当コースがおいしいと感じられたのは、鵜飼さんが料理の説明をしてくれたからでもある。取材で伺った私だけにではなく、どの客に対しても説明しているという。
「こういう料理です、と言葉で伝えることは大切だと思っています。何を食べているかがわかると何かしら発見があるでしょうし、特に外国の方たちは料理のコンセプトについて聞くのが好きですし。といっても、お食事の雰囲気を壊さないよう事細かにではなく、さらりと説明します」
調理服を白衣にしなかったのも、いかにも料理人だということを示すのではなく、客との距離を縮めて親近感を抱いてもらいたいからだという。なお、料理の説明は各テーブルでのデジタル版(QRコードのようなもの)の開発も考えているそうだ。当面は英仏日本語で、他の言語も増やしていきたいという。

客とのコミュニケーションは、パリで和の飲食店を経営していくうえでは必須事項だと鵜飼さんは言う。
「昔と違って手続きなどの情報も手に入り易いので、度胸があれば店を出すことは案外簡単かと思います。パリの和食店は僕も把握しきれないほど増えて競争は激しいですが、真剣に取り組めば固定客は増えていくでしょう。でも、日本では味で勝負という面もありますが、パリではなぜおいしいのか、どういう背景があるのかをしっかりと伝える言語力・コミュニケーション力がないと、うまくいかないでしょうね」
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