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なぜ大衆はナチスに傾倒してしまったのか? 『全体主義の起源』と倫理思想【3分だけ哲学】

2025年5月13日(火)16時30分
富増章成

よって世の中がパニックに陥ると、物事を他人まかせにしてしまいがちです。ヒトラーのような独裁者が登場する要因です。アーレントによると、大衆が独裁者に物事をまかせきることは、「大衆自らが悪をおかしている」ことになります。

アーレントは、複数の意見があることが大切であり、自由に話し合い、共同の活動に参加する自由な行為においてこそ、人間の個性や能力が発揮されるという公共性を強調しました。全体主義が再び発生しないようにするヒントがここにかくされているのかもしれません。

殺人についての倫理学:「私」と「他者」

ユダヤ人哲学者のレヴィナスは、ナチスの捕虜収容所に捕らえられ、家族はほぼ全員殺されました。生き残ったレヴィナスは、現象学により、他者や殺人についての倫理学を展開しました。

レヴィナスによると、私も他者もない「匿名性」において、「ただ存在する」状態を「イリヤ(ilya)」と呼びます。「イリヤ(ilya)」から出現する「私」は、「絶対的に孤独」です。

孤独な「私」が「他者」と出会いますが、「他者」は「私」とは絶対的に交わることのない存在です。「他者」の意識に入り込むことはできません。

現象学者のフッサールは、「他者」への感情移入で、他者問題を説明しようとしました。これは、他者も自分の意識の一部であることを意味しますので、うまく解決がなされていませんでした。

他者は思うようにならない存在である

レヴィナスの場合、他者はまったく理解不能(超越的)な存在で、他者の内面的な経験は自分には絶対に伝わってきません。私はその他者の「顔」と直面して、その背後に超越的な他者の存在を感じます。「他者」は世界の中にいないのですが(世界を超えているところにいるから)、「顔」を通じて「他者」を知ることになります。

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