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鬼才が描く「家族のしがらみ」...カンヌ金賞の映画『センチメンタル・バリュー』には「あの映画」のオマージュも

Trier’s New Masterwork

2026年2月20日(金)21時01分
デーナ・スティーブンズ (映画評論家)

物語を雄弁に語る映像

上映時間は2時間13分だが、そこには長編小説1冊分の感情の厚みと物語が詰め込まれている。映画館を出る頃には、観客は1つの家族の4世代にわたる人生と、そこに受け継がれている行動パターンやトラウマを見届けたような感覚に襲われることだろう。

物語の終盤、ノーラがメンタルヘルスの危機に陥る場面は長尺のクローズアップで撮影され、ノーラとアグネス、グスタフの3人の顔が互いに溶け合い、重なり合っていく。


言うまでもないが、それはイングマール・ベルイマン監督の『仮面/ペルソナ』(1966年)へのオマージュだ。同作は2人の主演女優の顔を半分ずつ組み合わせた映像のクローズアップで、登場人物の一体化を表現していた。

対してトリアーの映像は私たちに、同じ家族でも世代が異なれば似ている点と異なる点がたくさんあり、生き様も似て非なるものだという事実を突き付ける。自分と父親、そして妹の関係は何だったのかを理解し、3人の未来を受け入れる。そのためにこそノーラは苦しむ。

筆者はこの映画を2回見た。そして今はこう考えている。妙な例えだが、この映画はタマネギではなくキャベツみたいな構造になっている。葉っぱを一枚ずつむいていくと、そのたびに厚さもカーブも異なる物語が現れる。

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