最新記事

5G

欧米で排除されたファーウェイが狙う湾岸諸国の5G市場

Huawei’s Middle East Advance

2020年12月25日(金)17時00分
ソフィー・ジンセル

中東は5G導入が最も進んでいる地域の1つ(写真は北京のファーウェイストア) Carllos Garcia Rawlins-REUTERS

<中国のデジタルシルクロード構想の下、5G導入が最も進む中東での覇権を目指す>

2020年12月上旬、中東最大のテクノロジー見本市である「GITEXテクノロジー・ウイーク」がドバイで開催された。このイベントで、「共に新たな価値を」というスローガンを打ち出して大きな存在感を放ったのが中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)だ。

ファーウェイは2020年に世界の5G市場で注目を集め、中東でも広く認知されている。湾岸協力会議(GCC)に加盟するアラブ首長国連邦やサウジアラビアなどの企業を含む11の通信事業者が、過去1年間にファーウェイと5G関連の大型契約を結んだ。

中東は5G導入が最も進んでいる地域の1つ。2025年までにはGCC諸国が世界の5Gユーザーの大半を占めるとみられる。

ファーウェイにとって魅力的なのは、年間1640億ドル規模の情報通信技術(ICT)製品市場だけではない。湾岸諸国ではこの1年、公共のクラウドサービス市場が30億ドル近く成長している。政府の後押しがあれば、今後さらに成長が期待できる。

しかも湾岸諸国は、アメリカやヨーロッパの一部が進めるファーウェイ排除の影響を受けていない。理由は、これらの国々の地政学的な位置付けにあるのかもしれない。石油の輸出は中国に、軍事・外交面はアメリカに依存している湾岸諸国にとって、米中代理戦争の舞台になるのは避けたいところだ。

しかし湾岸諸国は新型コロナウイルスの感染拡大の中で、アメリカよりも迅速な回復を遂げている中国への依存を強めつつある。その大きな要因が、中国が力を入れる安価な産業用インターネット(産業用機器とインターネットが融合した形)の開発だ。

アジア勢躍進の扉を開く

サウジアラビアの通信大手サウジテレコムは、リモート教育の増加で通信量が10倍以上増えた。経済改革案「ビジョン2030」実現のためにも、ネットワークインフラの確保は急務だ。カタールも2022年に自国開催するサッカーワールドカップを初の「5G大会」にしようと準備している。

世界の5G市場におけるファーウェイ成長の基にあるのが、中国の「デジタルシルクロード(DSR)」構想だ。一帯一路構想の延長として提起されたDSRは、今や中国のデータ通信活動の国外における総称として定着している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF、24・25年中国GDP予想を上方修正 堅調

ワールド

タイ当局、タクシン元首相を不敬罪で起訴へ 王室侮辱

ビジネス

国債先物は続落、長期金利約12年半ぶり高水準1.0

ビジネス

中国国有銀が人民元を下支え、スワップ取引活用=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中