最新記事

国債

木内日銀委員「国債を永遠には買えない、限界意識されれば金利が大幅に上昇」

来年には中央銀行の国債保有比率が4割の英国を上回り、未曾有の領域へ突入

2015年12月4日(金)09時33分

12月3日、日銀の木内登英審議委員は都内で講演し、日本経済の実力を考慮すると金融政策のみで2%の物価目標を実現するのは難しいとの持論を強調した。日銀本店前で6月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

 日銀の木内登英審議委員は3日都内で講演し、年間80兆円(残高ベース)の国債買い入れを「永遠には続けられない」ため、市場で買い入れの限界が意識されれば金利が上昇するリスクがあると警鐘を鳴らした。自身が提案する買い入れ減額の必要性を主張するともに、急激な円高・株安には一時的な大量の資金供給が望ましいとの案を示した。

来年は国債の4割を日銀保有、「未曾有の領域」

 木内委員は昨年10月の追加緩和に反対。その後も一貫して国債買い入れの減額を1人で提案し続けてきた。この日の講演では現行の「量的・質的緩和(QQE)」を継続する副作用の大きさを示すとともに、急激な市場変動への対案を示した格好だ。

 日銀の公式見解では物価が2%の目標2016年度後半に達成する見通しだが、木内委員は「2%は日本経済の実力をかなり上回っている」ため「17年度まで視野に入れても達成する可能性は低い」と指摘した。目標を「金融政策のみで実現するのは難しい」とし、追加緩和など「短期間で物価を押し上げようとすれば経済・物価の安定をむしろ損なう」とした。

 国債買い入れ自体も壁に直面しており、株安などで国内の金融機関が国債を買い増す場合、「日銀による国債の買い入れが困難化する事態も考えられる」とした。国債買い入れの限界が「突然意識されれば、国債金利の大幅な上昇につながる可能性も考えられる」と懸念した。

 日銀が現行の国債買い入れを継続すると、国債発行残高に占める中央銀行の保有比率が、現在主要国で最大の英国(約4割)を上回り「未曾有の領域に入る」と指摘した。

市場急変には短期的資金供給で対応

 金融市場では、中国要因で株価が急落した8月など、木内委員に対して市場急変の際の政策対応について説明を求める声が出ていたが、木内委員は「短期的な環境変化に対して量の拡大は妥当でない」と述べ、「経済情勢が著しく悪化すれば、量の目標に拘らず一時的な円・ドル資金供給を検討すればよい」と説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF、日本の財政措置を評価 財政赤字への影響は限

ワールド

プーチン氏が元スパイ暗殺作戦承認、英の調査委が結論

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中