最新記事

ネット販売

アマゾンにドイツで労組の洗礼

賃上げや待遇改善を求める労組と初めて相対したアマゾンは、詭弁で逃げ切りを図ろうとしているが

2013年5月15日(水)15時35分
サマンサ・スタインバーン

初体験 バートヘルスフェルトのアマゾン倉庫の前で抗議活動を行う労働者たち Lisi Niesner-Reuters

 ドイツのバートヘルスフェルトとライプチヒという2つの町にある米アマゾンの倉庫で、約850人の作業員が5月14日の朝、ストライキに突入した。午後のシフトに入れば、ストはさらに拡大すると見られる。

 ストは労働組合「ver.di」が呼びかけ、丸1日の予定で実施された。バートヘルスフェルトの労働者のうち約3300人が、ライプチヒの労働者のうち約2000人がver.diの組合員だ。

 彼らが抗議しているのは、国内に8カ所あるアマゾン倉庫で働く労働者たちが、労働協約を結べないでいることだ。同組合は、「最大のオンライン小売業者であるアマゾンが、労働者と労働協約を結ばずにいることは許容できない」との声明を出した。

 ドイツの現場労働者の賃金は、産業別の労働協約を適用することで等級によって業界内で一定の水準が決められ、最低賃金の役割を果たしている。同組合によればアマゾンが労働者に支払っている賃金は、ドイツ国内で通信販売小売業として労働協約を結んでいる他の労働者の賃金を下回っているという。

 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、バートヘルスフェルト倉庫の新入社員の時給は9.83ユーロだが、通信販売小売業者として労働協約を結んでいる他社の賃金は12.18ユーロ。ライプチヒの場合は、協約賃金が時給10.66ユーロなのに対してアマゾンの賃金は9.30ユーロだ。

 こうした抗議についてアマゾンは、ドイツにある同社の流通倉庫は物流センターであり、通信販売小売業の倉庫ではないと主張。物流産業だとすれば、同社倉庫の労働者たちの賃金は十分だとしている。

 労働組合と労働協約を結ぶことになれば、アマゾンは新たにクリスマスシーズンのボーナスや、残業時や休日出勤時の特別手当を支払わなければならなくなる。今回、初めて労働者のストを経験したアマゾンは、はたしてどんな対応を見せるのだろうか。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、プーチン・ロシア大統領の訪問で準備=通信社

ビジネス

中国発の格安ネット通販、90日間の関税猶予中に米在

ワールド

米下院共和党、気候変動対策費を大幅削減へ トランプ

ワールド

スターマー英首相私邸で不審火、建物一部損傷 ロンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中