コラム

アメリカ大統領は「最高共感官」でなくちゃ

2017年11月02日(木)11時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラム二スト、タレント)

©2017 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE

<米兵の遺族やハリケーン災害の被災者に共感を示せないトランプは、大統領として落第点!?>

Commander in Chief は軍の最高司令官で、米大統領の別称。風刺画の Compassioner in Chief(最高共感官)は造語だ。だが、戦死者の遺族や自然災害の被災者など、苦しんでいる国民を慰めたり、共感を示すのは大統領の大事な仕事。最近、そうした場面があったが、トランプ大統領の対応は最高だったと本人は思っているようだ。

風刺画を左から見ていくと、まずはニジェールで米兵4人が武装勢力に殺されたときの場面。トランプは遺族に電話を入れたが、妻の1人は「入隊したことで、本人は覚悟していただろう」と言われて傷ついた。大統領が戦死した夫の名前を知らなかったことで、さらにムカついたという。ちなみにトランプは6月に別の戦死者の父親に、自分の口座から2万5000ドルをあげると約束した。もちろん小切手は送ったよ。その約束が新聞に出た10月に。たまたまその日に気が付いたのか?

次は、超大型ハリケーンが自治領プエルトリコを直撃した後。トランプは現地に駆け付け、避災者にペーパータオルを放り投げて配った。失礼な振る舞いだと突っ込まれた彼は「楽しかった。彼らも楽しんでいた」と弁解(?)。1カ月たった今も島の約8割が停電中で、住民の約3割は安全な飲み水がない状態だが、トランプは政府の対応を「10点満点!」と絶賛。これにはプエルトリコの首都サンフアンの市長も「10点です」と同意した。「100点満点ならね」

最後に、58人が亡くなったラスベガスの銃乱射事件。トランプは失言も非常識な態度も見せていない! そこに驚くこと自体がおかしいけど。しかし銃規制などの再発防止策は提案していない。「ラスベガス銃乱射の犠牲者たちはアメリカで外出したことで、覚悟していただろう(The gun victims in Las Vegas knew what they were signing up for when they went outside in America.)」と考えているようだ。

どのケースも国民が亡くなっており、大統領は厳かに対応するべき。だがトランプは慰霊というより、異例の対応を見せている。トルーマン大統領の机には The buck stops here.(責任転嫁はしない)と書かれたプレートがあった。トランプの場合は The empathy stops here.「共感しない」だね。

【ポイント】
I MAKE THE BEST CONDOLENCE CALLS TO GOLD STAR FAMILIES...OBAMA NEVER WOULD'VE CALLED YOU !
「戦死者の家族にこれまでで最高のお悔やみの電話をかけている。オバマ大統領なら、あなたに電話しなかったでしょう」

WE'RE DOING GREAT IN PUERTO RICO...THEY'LL BE TALKING ABOUT MY PAPER TOWEL-TOSSING SKILLS FOR YEARS!
「われわれはプエルトリコで素晴らしい対応をしている。私がペーパータオルを投げる腕前は、何年も語り草になるだろう」

<本誌2017年11月7日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story