コラム

ニューハンプシャー州予備選敗北で、ヘイリーが仕掛ける一発逆転策とは?

2024年01月24日(水)14時30分
ニッキー・ヘイリー

ヘイリーにはまだ地元サウスカロライナ州の予備選が残っている Jasper Colt/USA TODAY NETWORK/REUTERS

<米政界やメディアは、トランプ対バイデンの本選がほぼ確実になったと見ているが......>

大統領選へ向けた共和党の予備選は、今月15日に行われた第1回のアイオワ州党員集会でトランプ候補が50%を超える支持を獲得、2位のデサンティス候補は21%、3位のヘイリー候補は19%としていました。そして今回、現地時間23日にニューハンプシャー州で予備選が行われました。

その直前、21日の日曜には、アイオワで2位だったデサンティスが突然、選挙戦からの撤退とトランプ支持を表明しました。タイミングとしては急でしたが、そもそもデサンティスのニューハンプシャーでの支持率は7%と低迷していましたから、ある意味で想定内と言えます。


デサンティスは、28年の大統領選にターゲットを変え、今回はトランプを支持することで、トランプ票の継承を狙っているのだと考えられます。また、アイオワではトランプに大差で敗れたものの、4年後も予備選の最初に来るであろうアイオワで十分に知名度を浸透させたということでは、種まきとして成功だったと見ているようです。

いずれにしても、ニューハンプシャー予備選は、勢いに乗るトランプに対して、共和党内の最後の砦とも言えるニッキー・ヘイリーがどこまで善戦するかが大きな焦点となっていました。構図としては一騎打ちですが、仮にヘイリーが失速すれば、予備選はゲームオーバーになりかねません。

ヘイリーは高らかに選挙戦「継続」を宣言

この後のネバダ州、地元でありながら保守派の多いサウスカロライナ州で踏みとどまって3月5日の「スーパー・チューズデー」の決戦に持ち込むのが、ヘイリー陣営の戦略でした。ですが、現地の午後8時から本格的に開票が始まると、トランプがどんどん票を伸ばし、各地で55%対45%という差になっていきました。

そして現地8時半ごろ、全州の16%程度の票が開いた時点で、CNNなど各メディアは一斉に「トランプ勝利」の判定を出したのでした。興味深いのは、その直後、CNNがトランプに当確を打った数秒後にヘイリーが選対本部で演説を始めたのです。

ヘイリーは、ニューハンプシャー州への感謝、選挙戦を支えてくれた家族への謝辞を口にし始めました。会場はシーンと静まり返り、これは「コンセッション・スピーチ(敗北宣言)」ではと誰もが思った直後に、ヘイリーは高らかに「選挙戦の継続」を宣言したのです。とにかく自分の地元サウスカロライナをはじめ「多くの州が待っている」なかで、「ラスト・ファイター(最後の闘士)」として戦い続けるというのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story