コラム

バイデン来日の目的は本当に「対中包囲網」なのか?

2022年05月18日(水)16時00分

3)その中国では、ゼロコロナ政策の行き詰まりから、習近平派は地盤沈下し、李克強首相派の勢いが増している。政争は汚職摘発という形態も取っており、例えば、李首相が主導した汚職追放を目的とした「廉政工作会議」が4月25日に開催された。直後の4月27日には習近平派と目される天津の廖国勲市長が死亡しており、その背景には習近平派の幹部が関わる汚職疑惑があるとされている。

4)同時に、4月27日には、アメリカでは議会下院が通称「枢軸法案」という "The Assessing Xi's Interference and Subversion Act" を超党派で可決。具体的には、習近平個人を名指しで「ウクライナ戦争においてロシアへの援助や便宜」をさせないという法案。国務省には、成立後30日以内に正確なレポートを提出させ、その後も90日ごとにレポートさせるとしている。間接的に習近平派の勢力を削ぐのが狙いか。

5)一方で、李首相派からは、IT企業の欧米における上場再開、あるいは上海ロックダウンの中止など、国策の転換につながるような発言が増えている。仮に中国が「共同富裕政策」を棚上げにして自由経済に戻り、サイバー攻撃を取り締まるようであれば、アメリカとのサプライチェーン復活もあり得る。

6)バイデン大統領も、トランプが通商戦争を仕掛けた際の「中国からの輸入品への上乗せ関税」を「インフレ退治」のために廃止することを検討すると発言。(5月10日)

バイデンの戦略の1つの可能性

以上の動きを総合すると、1つの仮説が浮かびます。それは、バイデンの戦略として、

「李首相派を密かに応援して中国を自由経済に戻しつつ、中国にはウクライナ停戦の仲介をさせる。これによって、アメリカのインフレの原因(原油高、物流の混乱、生産の遅滞)を全て断ち切り、2022年の中間選挙におけるダメージをコントロールする」

というものです。これに加えて、次のような可能性もあると思います。

「ウクライナ和平は、中国主導となればロシアに甘くなる。ただし、中国はウクライナ再建には大きな役割を果たす」

「中国は急速にウィズコロナに舵を切る。これをサポートするため、米国はmRNAワクチンのノウハウを供与する」

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

円続伸し152円台後半、ドルは弱い指標が重し

ワールド

ウクライナ大統領、選挙計画を2月24日に発表へ=英

ワールド

香港活動家の父親に有罪判決、娘の保険契約巡り基本法

ビジネス

中国1月CPI、+0.2%に鈍化 PPI下落率縮小
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story