コラム

突然辞任したヘイリー国連大使は、トランプ政権内の「抵抗勢力」だったのか

2018年10月11日(木)16時15分

仮にそうだとして、彼女の野心はどこにあるのかというと、2020年の大統領選というのは少々非現実的です。現職の大統領を共和党内の予備選で破るというのは、面白いアイディアかもしれませんが、仮に敗北した場合に政治生命は危機に瀕するからです。

現実的なシナリオは、任期途中でペンス副大統領が大統領に昇任した場合の副大統領というポジションを狙っているという可能性です。国務長官ポストという可能性もあるでしょうが、ズバリ副大統領が狙いだと思います。

というのは、仮に昇任して2020年の大統領選を戦うには、ペンスは「脱トランプ」色を出す必要がありますが、女性で、実務能力があり、トランプ外交に「やんわり抗議して辞任」したという骨があって、しかもマイノリティ(インド系)という彼女は、白人で宗教保守派のペンスには「ない部分を埋める」キャラクターだからです。その場合、2020年に民主党に負けたとしても、2024年(その時でも、彼女はまだ52歳です)には本格的な大統領候補として堂々と予備選に出ることは可能になります。

そう考えると、9月の「NYタイムズ匿名告発」は、中間選挙大敗を前提に、弾劾プロセスを民主党主導で進めさせないための「憲法修正25条4節」を使った副大統領のクーデター計画に連なるものであり、今回の「ヘイリー辞任」はその予兆だという可能性も指摘できるように思います。

では、どうしてトランプ大統領が円満に辞任表明を許したのかというと、まず大統領は、この種の勝気な女性には弱いということがあり、またペンス副大統領が大統領に「円満に辞めさせよう」と囁いた可能性が考えられます。

奇しくも、その翌日の10月10日には、NY市場は3%を超える暴落となりました。「どんなに無茶な政治をしても、株価と景気は好調」というのがトランプ政権がここまで続いたベースにはあったわけですが、こちらも揺らぎが見え始めています。中間選挙へ向けて、米政界には激変の予兆が続いているという見方をしておいたほうが良さそうです。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

今年の米成長率3%超の可能性、関税水準7月までに回

ワールド

欧州委員長、ハンガリー次期首相と電話会談 資金拠出

ワールド

中ロ外相、首脳会談やイラン・ウクライナ情勢巡り協議

ビジネス

ウォーシュ次期FRB議長候補、資産1億ドル超 21
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story