コラム

イチロー3000本安打がアメリカで絶賛される理由

2016年08月09日(火)15時00分

Ron Chenoy-USA Today Sports/REUTERS

<今週ついにメジャー通算3000本安打の偉業を達成したイチロー選手。現役選手の頂点に立っただけでなく、42歳の年齢を感じさせずストイックに野球に取り組む姿勢は、アメリカ球界で揺るぎない評価を受けている>(写真は7日の試合で3000本安打を達成したイチロー選手)

 今週7日、フロリダ・マーリンズのイチロー選手は、デンバーのクアーズ・フィールドでのコロラド・ロッキーズ戦に先発出場し、第4打席に三塁打を打ってメジャーリーグでの3000本安打を達成しました。これは史上30人目、つまり100年を越えるアメリカのプロ野球の歴史の中で30人しかいない「最高のクラブ」の仲間入りを果たしたことを意味します。

 日本の一部からは、「アメリカではそんなに評価されていない」という論調も見られましたが、そんなことはありません。達成の瞬間の実況だけでなく、スポーツ専門局での扱い、そして一夜明けた一般の新聞での扱いは大変に大きなものでした。

 例えばニューヨーク・タイムズの場合は、スポーツ別刷りの1面の上に「3000」という数字とともに見出しが出ており、2面にはほとんど全面を使って「その瞬間」の大きな写真とともにデビッド・ワルトシュタイン記者による長文の賛辞が掲載されていました。

【参考記事】ピート・ローズの愚痴をスルーしたイチロー選手の「選球眼」

 ニューヨークは、イチロー選手が2年間ヤンキースでプレーした「縁」がある街です。ですから、高い関心があるのかもしれませんが、それにしても同記者の記事はまぶしいほどの賞賛の言葉で埋め尽くされていました。

 なかでも、マーリンズのマッティングリー監督が多くのケガを抱えて3000本には遥かに及ばない2153本で終わっていることをふまえて、「(3000というのは)途方もない数だ。長い期間プレーしなくてはいけないし、大変な準備をして、自分のコンディションを維持しなくては達成できない。単なる記録以上の意味がある」という監督の言葉を紹介していました。ワルトシュタイン記者も、そしてニューヨークの野球ファンも、まったく同じ感想を抱いたと思います。

 では、どうしてここまでの高評価がされるのでしょうか?

 5つ指摘できると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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