コラム

日本とドイツ、「戦後の国のかたち」の違いとは何か?

2014年02月25日(火)11時36分

 2月24日にロイターが配信した記事によれば、3月末に主要国の首脳が一同に会する「核安全保障サミット」への参加にあたって中国の習近平主席は、ドイツを訪問するそうです。ロイターによれば、ドイツによる「第二次大戦への反省」に敬意を表すると共に、安倍政権への牽制を意図しているというのです。

 このドイツとの比較論に関しては、確かに日本の内外に「日本はドイツの謙虚な姿勢に見習え」というような声があるのは事実です。その意味で、仮にロイターの報道が的を得ているのであるにしても、習近平主席の発想は決してオリジナルではありません。

 では、本当に日本はドイツのケースに見習うべきなのでしょうか? ある部分はそうだと思います。ですが、ある部分は違います。ここは少し議論の整理が必要であると思います。

 まず、ドイツでは「第三帝国という国のかたち」が消滅し、分断の苦しみの後に新たな国家を建設していったわけです。そのような「完全な国体変革」があったドイツと違って、日本の場合は「国のかたち」がある種の連続性として維持されています。

 この点を取り上げて「日本は依然として枢軸国」だとか「戦犯国家」だという中傷があります。ですが、これはおかしな話です。戦後日本の「国のかたち」というのは、確かに不連続的な変革ではなかったかもしれませんが、官民挙げての平和国家への努力ということで「国のかたちの変革」がされたのは事実です。例えば戦後の長い間、日本は積極的に国際紛争をエスカレートさせる行動は全くしなかったわけで、それによって「国のかたち」は正常化していると考えることができます。

 また、連合国との和解ということでも、日本は1956年という早い時期に「連合国の発展形」である国際連合に加盟して、加盟国として多大な国際貢献をしてきたわけです。その戦後日本を「枢軸国」だという中傷は全くの「的外れ」でしかありません。

 また、ドイツは最終的に周辺国との国境紛争を「全て相手の主張を呑む形で譲歩した」という見方があります。確かに、ドイツは1990年に「再統一」を進める過程で、旧連合国との間で「最終的な戦争終結」のための「ドイツ最終規定条約」を締結、批准しています。その中で東部国境に関しては、オーデル・ナイセ線を採用し、それ以東の「領土再請求権」は放棄しているのです。

 この方式は日本の場合には全く当てはまりません。この決定は1990年時点で「統一ドイツという強国」が誕生することへの周辺国の警戒心を解くという「極めて特殊なギブアンドテイク」として成立していったものだからです。ですから、この「ドイツ最終規定条約」を前例として、日本に関係する国境紛争に適用せよというのは、仮にそうした主張が出てきたとしても、全く筋違いであると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ヒラリー氏、エプスタイン問題巡り「情報なし」 下院

ビジネス

語学アプリの米デュオリンゴ、予約販売額の見通しが予

ワールド

小売販売1月は前年比1.8%増、自動車販売や食品値

ビジネス

中国、外貨リスク準備金を実質廃止へ ドル購入コスト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    【和平後こそリスク】ウクライナで米露が狙う停戦「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story