コラム

シッパイがイッパイ、アメリカの中近東政策

2015年12月18日(金)17時30分

オバマは今月6日、執務室から異例の演説を行い国民に向けてテロへの対応を説明した Saul Loeb-REUTERS

 パリやカリフォルニアのテロ攻撃で世界に不安な気持ちが高まっている中、オバマ大統領がめずらしく執務室から演説を行った。情熱があふれ、強さや決意を見せて、アメリカ国民と世界の皆さんに勇気と安心を与える名演説を......と期待していた。ところがふたを開けてみれば、結局は元気も熱意もカリスマ性も見せず、今までと変わらない路線を走り続ける方針を淡々と説明しただけの「迷演説」だった。

「もったいないなぁ」と、すごいストレスを感じながら、テレビで見ていた。僕はテレビを見てストレスを感じるのが一番嫌い。ストレスを感じたいんなら、ゴルフをやるよ。

 オバマ大統領の冷静な説明のような演説は、場違いだった。あのタイミングのスピーチには情熱が必要。冷静な分析が求められているのはスピーチではなく、このニューズウィークのコラムだ。

 ということで、ここでアメリカの中近東政策を冷静に取り上げて、ちょっとストレスを発散することにしよう!

 アフガニスタン戦争で始まったアメリカの本格的な中近東への軍事介入から15年目に突入しても、中近東に平和は訪れていない。ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は莫大なエリアを支配している。各地域で宗教対立、宗派対立、民族対立が続いているし、政府が機能していない国が依然多い。機能している国でも、独裁政権や軍事政権ばっかり。民主主義国家であるイスラエルでは、パレスチナ人が弾圧に反発して第三のインティファーダ(蜂起・反乱)が始まりそう。アラブの春の唯一の成功例といわれるチュニジアの団体がノーベル平和賞をとったが、その希望の光は周辺諸国を明るくしてはいないようだ。そういえば、オバマ大統領もノーベル平和賞を受賞したね。返して欲しいな~。

 このように書いてきた僕だけど「オバマ外交は大失敗」と言おうとしているように思われそうだがそうではない。オバマ政権は、平和をもたらせることに成功していないと言っているだけ。失敗だとは言っていない。......まだ。

 まずは歴史を振り返り、アメリカの今までの政策も合わせて見ていかないと、失敗か成功かを評価することはできない。アメリカの中近東政策は、文字通り試行錯誤の繰り返しだ。たとえば、軍事介入には大きく分けて3つのやり方がある。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story