コラム

生物の行動を決定づける「自由エネルギー」とは?「量子科学」と「脳科学」の融合が解き明かすこと

2026年01月14日(水)17時52分

観測する脳と関係する心

【基調講演3: 量子科学技術研究開発機構 量子生命科学研究所 量子認知脳科学チーム チームリーダー、千葉大学連携教授/東北大学客員教授 山田真希子氏】

山田氏は、量子論の概念を手がかりに、人間の心や対人関係を捉え直す新しい視座を提示した。扱うのは物理としての量子力学ではなく、「不定性」「観測」「エンタングルメント(不可分の関係性)」といった量子論的な概念をメタファーとして心理・神経科学へ応用する試みだ。これまで物理学や数学の領域と思われてきた、「不定性」「観測」「エンタングルメント」といった量子論の考え方を、「心」や「人との関係性」という、最も人間的なテーマに適用する、新しい研究の最前線の景色を共有した。

「観測する脳」とは、世界だけでなく自分自身を常にモニターし続ける脳の働きを意味し、「関係する心」とは、心は個人の頭の中にあるだけでなく、人と人との関係の中にこそ心の状態が立ち上がってくる──。「観測する脳と関係する心」というタイトルにはそうした思いや視点が込められ、量子論的な考え方を人間関係や幸福に適用する研究を紹介した。強調したのは、これは物理としての量子の話ではなく、量子論の概念を「メタファー」として使うという立場だ。

現代のAIは、同じ入力に対して安定した出力を返す、極めて優れた装置と言える。しかし人間の心は違う。同じ出来事に出会っても揺れ、迷い、「まだよくわからない」という不定の状態にとどまることがある。この揺らぎや不定性をどう扱うか──それが山田氏の研究の出発点だ。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

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