コラム

経済統計を発表できない大連の不況

2017年06月12日(月)15時33分

東京へ戻るために大連の空港で飛行機を待っている時、大連市経済の不振をもたらしたもう一つの理由を垣間見た気がした。大連空港を飛び立つ国際旅客機の6割が日本のどこかの都市に向かうのである。ことほどさように大連は日本の方を向いていた。日本側もかつては通産省が音頭をとって伊藤忠、丸紅、東京銀行などが出資して大連工業団地を造成するなど日本企業の進出を支援し、多数の大企業が大連に工場を構えた。2000年代には日本向けのコールセンターなどビジネスサービス業も盛んになった。

しかし、いま大連のことは日本の中国ビジネスの世界でも余り話題に上らなくなってしまった。日本企業の大連におけるビジネスの低調ぶりは、大連から東京へ向かう中国南方航空の飛行機に私以外の日本人客がほとんどいなかったことからもうかがい知ることができた。それは大連のせいというよりも、日本企業が中国事業全般に意欲を低下させているせいかもしれない。大連が日本の方を向きすぎたことがかえってあだになったのである。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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