コラム

「プーチンが彼を嫌っている」...反ロシア記者らを狙った在英国際スパイネットワークの全容判明

2025年03月08日(土)16時15分

ルセフ被告が「副官」として使っていた旧知の医療品運搬業者ビセル・ジャンバゾフ被告(43)=同=はイヴァノヴァ被告とは長い交際関係にあった。ジャンバゾフ被告はガベロヴァ被告とも「インターポール(国際刑事警察機構)で働いている」とウソを言って付き合っていた。

221台の携帯電話、495枚のSIMカード、258台のハードドライブ、33台の録音機器、55台の監視カメラ、16台の無線機、11台のドローン(無人航空機)、Wi-Fi盗聴器、電子妨害機、55人分の偽造パスポートや身分証明書が押収された。大半は元ゲストハウスから見つかった。

パトリオット訓練中のウクライナ軍兵士の携帯電話番号狙う

イヴァノヴァ被告は軍用盗聴装置を使い独シュトゥットガルトの米軍基地で世界最先端のミサイル防衛システム「パトリオット」の訓練を受けていたウクライナ軍兵士の携帯電話番号を盗むよう指示されていた。ウクライナに配備されたパトリオットを無力化するのが狙いとみられる。

ガベロヴァ被告とともに英国にやって来たイヴァンチェフ被告は彼女が美容院を開業するために3万ポンドを貸したが、21年に破局。ガベロヴァ被告から「インターポールで働いている」とジャンバゾフ被告を紹介され、グロゼフ氏や他の人物の監視を手伝わされていた。

ルセフ被告はIT(情報技術)専門家だったにもかかわらず、携帯電話のメッセージを削除しておらず、暗号化もしていなかった。このためブルガリア人スパイネットワークの活動だけでなく、欧州におけるロシアとウラジーミル・プーチン大統領の関心もあぶり出された。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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