コラム

「私の主人はプーチンではなくルーブルだ」 プーチンと対立したロシア元石油王の闘争

2022年04月07日(木)17時52分
ミハイル・ホドルコフスキー

Henry Nicholls-REUTERS

<ロシアで一番リッチな男と呼ばれたミハイル・ホドルコフスキー。現在はプーチンに背を向け、彼は「世界にとって終わりのない危険だ」と欧米に訴える>

[ロンドン発]ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が支配する帝国に反旗を翻し、10年の投獄を経て西側に逃れた元露石油大手ユコス(2006年に破産)社長ミハイル・ホドルコフスキー氏(58)と筆者は7年前に握手したことがある。かつてロシアで一番リッチな男と言われた元オリガルヒ(新興財閥)の手は思ったより大きく、分厚く、そして温もりがあった。

ボリス・ベレゾフスキー氏(故人)と同じくプーチン氏の政敵というだけなのか、それとも心からプーチン氏とは対極の自由なロシアを目指しているのか。ホドルコフスキー氏はいま「21世紀の欧州大陸で侵略戦争を始め、戦争犯罪にも関与する男がロシアのような国を支配するべきではない。プーチンは世界にとって終わりのない危険なのだ」と力説する。

4月5日、米シンクタンク、大西洋評議会のZOOM討論会で、ロンドンを拠点に活動するホドルコフスキー氏は、ウクライナ軍に武器や訓練を提供し、ロシアに前例のない規模の制裁を科しているのに、いまだにロシアと戦争していることを認めようとはしない米欧の指導者に不満を隠そうとはしなかった。

220407kmr_rmp01.png

ZOOM討論会に参加したホドルコフスキー氏(筆者がスクリーンショット)

「プーチン氏は、これらは戦争だと断言し、核戦力を厳戒態勢に置いた。ウクライナが国を守るのを助けることが米欧にとってプーチン問題を解決する最終手段だ。ロシアはこれまでも資源を武器に使ってきた。これからも使うだろう。欧州はロシアの資源がなくても生存できる。米欧はウクライナの主権が回復されるまで制裁を解除しないことを決断すべきだ」

「醜い顔を鏡のせいにしても仕方がない」

プーチン氏は大統領就任後の2000年7月、21人のオリガルヒをクレムリンに集め、「あなた方は自分たちが支配する政治的な構造を通してこの政府を作り上げたことを忘れてはならない。醜い顔を鏡のせいにしても仕方がない。関係を完全に文明化するために、何ができるかを具体的かつ率直に話し合おう」と呼びかけた。

プーチン氏の狙いはボリス・エリツィン初代大統領の取り巻きに自分への忠誠を誓わせることだった。ベレゾフスキー氏はすでにプーチン氏への権力集中を嫌い、対立していた。「私たちの主人はルーブルだけ」という『資本主義宣言』をしていたホドルコフスキー氏もプーチン氏に反発し、ユコスに有利な法案を通すため数百万ドルを使った。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ペプシコ、25年第4四半期売上高は予想上回る 主力

ビジネス

イランで暗号資産取引が活発化、当局の制裁逃れ巡り米

ビジネス

ホワイトハウスの会合、暗号資産法案の行き詰まり打開

ビジネス

CKハチソン子会社、パナマ相手に仲裁手続き 港湾契
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 10
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story