コラム

おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ムダ」だけではない、高市政権の「矛盾」とは

2025年12月18日(木)10時33分

高市政権が掲げる政策と「おこめ券」の矛盾

おこめ券の発行や管理には相応のコストがかかるので、500円のおこめ券でも、実際には440円分の商品としか交換できない。自治体が各世帯に郵送するコストなども加えるとさらに経費の割合が高くなる。予算に限りがあるなか、1割以上も経費に消える施策が妥当なのか、疑問の声が上がるのは当然のことといえる。

さらに言えば、おこめ券の配布は高市政権が掲げる農業政策と矛盾するという大きな問題もはらんでいる。


石破政権では、コメを増産し、価格を安くする道筋が模索されていたが、高市政権は政策を大きく転換。コメは安くせず、むしろ価格を引き上げる方針に舵を切った。コメの値段を上げる政策を実施するなか、おこめ券を配布して需要を増やせば、価格がさらに高騰するリスクが出てくる。

一部からは、コメの価格をつり上げるため、あえておこめ券を配っているのではないかとの指摘も出ている状況だ。鈴木氏は「コメの値段に影響を与えたいということは一切ない」と強調しているが、高市氏はコメ政策の転換について国民に十分に説明しておらず、説得力に欠ける。

もともと石破政権では、物価高対策として現金給付が検討されていたが、「バラマキ」であると批判が寄せられ、自民党内からも反対の声が出た。世論を無視した現金給付の検討が参院選敗北の原因であるとされ、石破氏を批判し、減税を強く主張していた高市氏が首相の座に就いた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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