コラム

先進国に共通する人手不足に、IT化ではなく「奴隷労働」で対処した日本

2022年08月31日(水)19時07分

労働法制を守らせるというごく当たり前のことを政府が実施するだけで、国内賃金は確実に上昇していたはずだが、雇用維持が最優先され、政府は労働基準法を厳格に適用してこなかった。昭和の時代ならいざしらず、高い付加価値が求められる現代において、労働法制遵守は必須の課題といってよいだろう。

政府が法律の運用を適切に行えば、最低賃金以下の労働は事実上、不可能となり、人手不足に対処するため、多くの業界においてIT化や自動化が進むだろう。こうした先行投資の増大は国内景気にプラスの効果をもたらし、最終的には企業の生産性向上を通じて賃金の上昇につながる。

日本企業は90年代以降、IT投資をほとんど増やしておらず、同じ期間で3~4倍に拡大させた諸外国とは致命的な差となっている。実習制度の見直しは、日本社会がIT化に舵を切る最後のチャンスといってよい。ここで本格的な改革を実施できなければ、二度と浮上のチャンスはないかもしれない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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