コラム

円安誘導をもうアメリカは許さない

2016年05月03日(火)17時30分

 3項目の具体的な査定基準は以下となります。
①貿易収支:対米貿易黒字が200億ドル(1ドル107円換算で2兆1400億円)を超えた場合。ちなみに200億ドルは米国のGDPの0.1%に相当。
②経常収支:経常黒字額が各国の国内総生産(GDP)の3%を超えた場合
③為替介入:各国のGDP2%以上の一方的な外貨購入を繰り返し行うような介入を実施した場合

 日本の2015年の状況ですが、
①対米貿易黒字は686億ドルでオーバー
②経常黒字(暦年)は16.4兆円、日本のGDP(暦年)は実質で528.6兆円、名目で499.1兆円。実質3.1%、名目3.3%と換算されますので、いずれにしてもオーバー(報告書では3.3%でオーバーとしていますので名目GDPを使っている模様)。
③為替介入の実績なし

 日本以外の4か国も同様に、3項目のうち2項目が相当したため「監視リスト」の対象になったというわけです。

 では3項目全てに該当した場合はどうなるのか。大統領は米財務長官を通じて2国間協議を開始し、その2国間協議が1年経過した段階で財務長官が為替レートの過小評価や黒字解消のための適当な政策を当該国がしていないと判断したなら大統領は次にあげる行動手段のうち少なくとも1つ以上を実施するとしています。

1)米国のODAを扱う機関であるOPIC(海外民間投資公社)への当該国のアクセスを拒否
2)米の政府調達の際に当該国を排除
3)IMFへ監視強化を要請
4) 適切な政策を採用してないことを踏まえた上での通商協定を締結するか、通商協定交渉に参加させるべく米通商代表部に指示

 日本に大きく関わってくるのは2)、4)あたりになるのでしょう。行動手段と報告書ではしてありますが、実際には制裁措置が発動されると言った方が適当です。為替レートへの注文もよりダイレクトなものとなるでしょう。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story