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日銀総裁会見のポイント:利上げへの距離感探る、経済・物価のリスク 新政権との関係

2025年10月30日(木)13時15分

 30日午後3時半から予定されている日銀の植田和男総裁の記者会見では、次回以降の会合での利上げを示唆するような発言があるかがポイントとなる。写真は2017年6月、都内の日銀本店前で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

Hitoshi Ishida

[東京 30日 ロイター] - 30日午後3時半から予定されている日銀の植田和男総裁の記者会見では、次回以降の会合での利上げを示唆するような発言があるかがポイントとなる。今回の会合でも2人の審議委員が利上げを提案。べセント米財務長官が日銀の利上げを促す発言を行う中で、総裁が利上げ時期についてどういった考えを示すか。具体的な示唆がなくても、海外経済や関税政策の国内経済への影響、物価見通しに関する見解から、利上げへの距離感を探ることになる。

1.経済・物価見通しと先行きリスク

日銀は政策維持の理由として、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていると指摘、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認する考えを示した。経済見通しは26年度は下振れリスクが大きいとしたが、前回会合以降、経済・物価見通しのリスク判断に変化はないか。日銀が経済・物価情勢を点検する上で重要視する海外経済、関税政策の日本への影響、食料品価格の動向について、どのような見方をしているか。米関税の影響が後ずれしており、いずれ顕在化するという見通しも含め、従来の見方が現在までに示されたデータなどを受けてどう変化したかをまず確認したい。

2.審議委員の利上げ提案

今回の決定会合でも、高田創審議委員と田村直樹審議委員が0.75%への利上げを提案した。これに追随する審議委員はいなかったが、利上げに向けた環境について引き続き政策委員の間で温度差がみられる。利上げ提案の動きが続いていることに、総裁がどのような見解を示すか。景気は底堅さが続いており、円安、資産価格の上昇など、利上げに過度に慎重になることがビハインド・ザ・カーブに陥る可能性についてどういう見解を示すか。利上げ議案を否決した理由と、利上げに向けた環境を確認出来るタイミングについてどのような説明があるか。

3.基調的物価上昇率

今回の展望リポートでは26年度、27年度ともコアCPI見通しは2%以下にとどまることが示され、物価見通しのリスクもおおむね上下にバランスしているとされた。基調的物価上昇率が目標に達する時期についても従来通り、見通し期間の後半としたが、すでに物価安定の目標はおおむね達成されたとの見方が一部審議委員からも出る中で、物価上振れのリスクをどうとらえているか。前回会合以降、基調的物価は2%にさらに近づいているとみるのか、現状認識を確認したい。

4.円安と米財務長官発言

高市トレードによる円安進行に対し、どのような見解を示すかも確認したい。米FOMCの利下げを受けても円安基調に変化はなく、輸入物価高を通じた物価上昇が政策見通しにどう影響するのか。円安に関連して、べセント米財務長官が日銀の利上げを促す発言をしたことをどうとらえるか。

5.高市政権との間合い

高市政権が発足して初の決定会合で、積極財政をうたう新政権の政策をどうとらえているかも注目点となる。一部の日銀OBは積極財政のもとで日銀が金融正常化に極端に慎重になると、ひずみが生まれると指摘している。

高市首相はまた、マクロ経済政策の責任は政府が持つと発言しており、新政権との関わり方も今後の日銀の政策を占うポイントとなる。政府との関係やコミュニケーションの取り方などについてどのような考え方が示されるか。

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