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アングル:水大量消費のデータセンター、干ばつに苦しむメキシコ中部に誘致

2024年09月15日(日)07時53分

メキシコ中部ケレタロ州の半砂漠地帯に位置する自治体コロンは、2年にわたり干ばつに襲われた。だがその一方で、ケレタロ州政府はデータセンター建設を誘致すべく企業に優遇措置を提示している。写真は干上がったダム。ケレタロ州サンタ・ロサ・ハウレギで6月撮影(2024年 ロイター/Sandra Hernandez)

Diana Baptista Fintan McDonnell

[コロン(メキシコ) 6日 トムソン・ロイター財団] - メキシコ中部ケレタロ州の半砂漠地帯に位置する自治体コロンは、2年にわたり干ばつに襲われた。今も多くの住民が作物の立ち枯れや給水制限に悩まされている。

だがその一方で、ケレタロ州政府はデータセンター建設を誘致すべく企業に優遇措置を提示している。一般に、データセンターはサーバー冷却のために大量の水を消費する。

AIの発達により、データセンターが消費する水量は増えつつある。AIで必要になる高性能のプロセッサーのせいで、通常のサーバーよりも冷却条件が厳しくなるためだ。

ケレタロ州で持続可能開発担当長官を務めるマルコ・デル・プレテ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、「ケレタロ州はデータセンターの集積地になりつつある」と語った。

コロンへのデータセンター誘致の旗振り役は、保守派とされるマウリシオ・クリ同州知事だ。マイクロソフトやグーグル、アマゾンから、データセンター新設に向けて100億ドル(約1兆4320億円)の投資を引き出した。

オックスフォード大学でAI関連の講義を担当するアナ・バルディビア氏は、企業は「現地政府が税制や用地取得の面で優遇するなど何らかのインセンティブによって誘致を推進していて、歓迎されていると感じられる地域に向かう」と語る。

ケレタロ州内のテクノロジー企業による業界団体「ボルティスIT」のミゲル・アンヘル・カラピア会長は、同州がデータセンターにとって理想的な環境である理由として、治安の良さとメキシコ市への近さ、そして地震その他の自然災害が少ない点を挙げる。

だが、コロンにデータセンターを建設している企業各社も、またケレタロ州政府も、データセンターによる水の消費量や、ただでさえ水不足に悩まされている住民に与える影響については、情報提供を拒否している。

ウルグアイやチリなど、やはり水不足に悩む他のラテンアメリカ諸国では、データセンターの進出に対して抗議行動が起きている。

メキシコ市やヌエボレオン州でもデータセンターが稼働しており、渇水に悩む住民よりも大企業を優先して水が配分されているとして抗議が起きている。

マイクロソフトはケレタロ州内の自社データセンターについて、冷却水の消費を減らす技術の導入を予定しており、「水を消費する期間は1年のうち5%以下にとどまる」とした。

アマゾン・ウェブ・サービスの広報担当者は、「稼働にあたって継続的な冷却水の利用を必要としない空冷式のデータセンター設計を選択した」と述べた。

グーグルは、水の消費量を削減するような環境重視のサプライヤーと提携していると説明した。

米連邦政府の資金で運営されているカリフォルニア州の研究機関、ローレンス・バークレー国立研究所のアーマン・シェハビ研究員は、一部のデータセンターでは水消費の効率化が進んでいるものの、それでも水資源に対する全体的な需要は増加すると述べている。

環境保護活動家のテレサ・ロルダン氏は、データセンターが増加すれば、当該地域における水不足と水資源配分の不公平は深刻化すると指摘。「住民のための水がない以上、企業のための水など論外ということになる」

<乾いた農地、干上がるダム>

コロンから50分ほど離れた人口約400人の小規模な農漁村、ラ・サリトレラ。黄褐色の丘陵に挟まれた2カ所のダムを訪れる観光客に依存している。

だがこの2年間、コロン地域は干ばつに悩まされてきた。今年4月から7月にかけての干ばつでは、渇水レベルとして最悪とされる「異常事態」が公式認定された。

現在2カ所のダムはほぼ干上がっており、観光客の数も減った。ダムの水位が非常に低いため、魚も漁網にかかるような大きさまで成長しない。

森林再生プロジェクトを運営するリカルド・ビジャレアル氏によれば、干ばつの背景には、雨季の天候不順と牧畜のための森林伐採があるという。

市場では、熱波と干ばつに何とか耐えたわずかな作物を農家が販売している。グアダルペ・エルナンデスさん(68)は狭い農地でブラックベリーを栽培しているが、水は15日おきにしか供給されない。確保した水が夜間に盗まれることもある。

観光客にブラックベリーを販売しているエルナンデスさんは、「作物は6割方だめになった。作物がとれなければ収入もゼロだ」と語る。

ラ・ソレダード・ダムの近くで小さなレストランを営むアグリピナ・ニエベスさんは、自宅では8日に1度しか水が供給されないと話す。

ニエベスさんはプラスチック製の水差しとポリタンクを使い、自宅と店舗の飲料水、皿洗いや床掃除、トイレで使う水を貯めている。

「これほどの水不足は経験がない」とニエベスさん。「貧しい人たちは水なしでどうすればいいのだろう」

<データセンターの水消費量、「知るすべなし」>

2020年、ロペスオブラドール大統領は、マイクロソフトがクラウド用データセンター建設に11億ドルを投資すると発表した。

マイクロソフトは3年後、コロンで稼働する2カ所のデータセンターのうち1カ所のみにおいて、年間2500万リットルの地下水を採取する水利権を得た。

国家水委員会(CONAGUA)のデータによれば、2500万リットルという量は、コロン自治体が域内の湧水から採取し公共用水・都市用水に配分している水の24%に相当する。

CONAGUAの広報担当者は、ケレタロ州では新たな水利権を認可しておらず、マイクロソフトは別の水利権保有者から合法的に購入したと述べた。

データセンターで使われる水は、バジェ・デ・サン・ファン・デル・リオ帯水層から採取される。だがある水道局の分析では、この帯水層ではすでに568億リットルの取水過多になっているという。

前出のデル・プレテ氏に、州内20カ所のデータセンターに配分されている水の量について質問したところ、「データの請求権限がなく、手持ちのデータはない」としつつ、1軒のレストランが1カ月に消費する量と同等だと答えた。

CONAGUAによれば、マイクロソフトが獲得した水利権は別として、他のデータセンター向けの水は、州のインフラや、あるいは域内の工業団地にすでに与えられている水利権によって供給されるという。

「こうしたデータセンターに水がどのように配分されているかを知るすべはない。1つだけ確実に言えるのは、データセンターは市民よりも優遇されているということだ」とロルダン氏は言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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