ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、ロシアとの情報共有を擁護 議会は説明要求

2017年05月17日(水)04時29分

 5月16日、トランプ米大統領は先週のホワイトハウスでの会談でロシア当局者と事実を共有したとし、ロシアとの情報共有は大統領の権利だと主張した。テレビに映るトランプ大統領とロシアのキスリャク駐米大使、ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ米大統領は16日、先週のホワイトハウスでの会談でロシア当局者に機密情報を漏らしたとされる問題を巡り、大統領にはテロリズムや航空安全対策に関する事実を共有する「絶対的な権利」があるとして、自身の判断は正当との立場を示した。過激派組織「イスラム国」への戦いでロシアの取り組み強化を促すために情報を共有したと説明した。

だが大統領が極めてセンシティブな情報をロシア側に提供したことを認めたことで、身内の共和党メンバーからも理由を説明するよう要求が強まっている。

また影響は金融市場にも波及。市場が期待する成長押し上げ政策をトランプ大統領が実現できるのか不透明感が強まり、ドルはほぼ全面安の展開となった。ユーロ/ドルは1.10ドルの節目を上抜け、トランプ氏が大統領に当選した昨年11月以来の高値をつけた。

大統領はツイッターで「大統領として私は(公表されていたホワイトハウスでの会談で)ロシアとテロリズムや航空機の飛行の安全性に関する事実を共有したかった。私にはそうする絶対的な権利がある」と強調。「人道的な理由に加え、私はロシアが過激派組織イスラム国(IS)とテロリズムへの対策を強化することを望んでいる」と表明した。

米当局者によると、トランプ大統領はロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使に「イスラム国」に関する機密情報を漏らした。機密情報であっても、大統領には情報を開示する権限があるが、今回は同盟国から提供された機密情報を開示同意を得ずに提供したとされる点が問題視されている。長年の情報共有合意で構築した同盟国との信頼関係を損う恐れがあるためだ。

前例がない訳ではないが、外国の外相がホワイトハウスで米大統領との会談を認められるのは異例。

上院情報委員会はホワイトハウスに対し、ロシア側への情報提供をめぐり、一段の詳細を明らかにするよう要請した。同委員会の報道官が明らかにした。

関係筋によると、議会が行う調査では、会談時のメモの写しの提出を求める見通し。

マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者団に対し、トランプ大統領はロシア側に情報源は明らかにしていないと述べた。「大統領はこの情報をどこから得たのかさえ知らない。情報源や取得手段については説明を受けていない」とし、「大統領が共有した情報は全く適切」とした。

米ニューヨーク・タイムズ紙は情報を提供した同盟国がイスラエルだと報じた。ただ、米国家安全保障関係筋2人は、報道内容に懐疑的な見方を示している。スパイサー報道官は定例記者会見で、報道に関するコメントを控えた。

コミー前連邦捜査局(FBI)長官の電撃解任に続く新たな疑惑の浮上で、トランプ大統領に対しては共和党内からも批判の声が上がっている。これにより、税制や医療保険改革など重要法案の立法化が後回しになる恐れがあるほか、ホワイトハウスと情報当局との確執もあらためて浮き彫りとなった。情報当局は今年1月、昨年の米大統領選でトランプ氏の当選を手助けしようとロシア当局が関与していたと結論付けており、トランプ氏は就任当初から情報当局を度々攻撃している。

トランプ大統領はその後、再びツイッターへの投稿で「情報当局関連の漏えい者」に批判の矛先を向けた。

ロシア側はホワイトハウスの会談で機密情報をもらしたとの報道について「全くのナンセンス」と否定、トランプ大統領の擁護に回っている。

上下両院の共和党トップは表立った批判を控えている。ライアン下院議長のオフィスは完全な説明を望むとコメントしたほか、マコネル上院院内総務はブルームバーグテレビに対し、ホワイトハウスはもう少し問題を起こさないよう控えて欲しいと述べた。

一方、他の共和党メンバーは懸念を表明。スーザン・コリンズ上院議員は機密情報を開示する権限があっても、「ロシア側にこのようなセンシティブな情報を共有していれば危惧すべき事態」と述べる。

上院外交委員会のボブ・コーカー委員長も疑惑は「極めて懸念すべき」と指摘。ホワイトハウスは「明らかに下降線をたどっている」とし、問題にしっかり対処する必要があるとした。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザへ「強力な」攻撃指示 即座に空

ビジネス

米CB消費者信頼感、10月は6カ月ぶり低水準 雇用

ワールド

米テキサス州、鎮痛剤「タイレノール」製造2社提訴 

ワールド

米中首脳、フェンタニル規制条件に関税引き下げ協議へ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 5
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 6
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中