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来年度の賃上げの見極め、新年度になってから=安達日銀委員

2023年11月29日(水)15時14分

 11月29日、日銀の安達誠司審議委員は愛媛県金融経済懇談会後の記者会見で、来年度の賃上げのすう勢が把握できるのは新年度に入ってからになると述べた。写真は10月、都内で撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[松山市 29日 ロイター] - 日銀の安達誠司審議委員は29日、愛媛県金融経済懇談会後の記者会見で、来年度の賃上げのすう勢が把握できるのは新年度に入ってからになると述べた。大企業が来年度の賃上げに前向きな半面で、中小企業では「今年度並みの賃上げはかなり厳しい」との声が出ていると指摘、今はマイナス金利解除がいつになるか言及できる状況にないと語った。

2%物価目標の実現を見極める上で、来年度の春闘動向が重要なポイントになる。市場では来年1月のマイナス金利解除観測が出ているが、安達委員の発言はこうした見方をけん制した格好だ。安達委員は春闘の動向について「年度が明けないと、中小企業を含めてわからない」と述べた。

安達委員によると、懇談会では地域の中小企業の立場から「将来の金利上昇に対するリスクが思ったより大きい可能性がある」との訴えがあった。安達委員は「そこは考えないといけない」と述べた。

日銀は7月、10月とイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟化してきたが、安達委員はマイナス金利解除はYCCの運用柔軟化とは「性格が異なる」と指摘。マイナス金利解除は短期の政策金利を動かすことになるので伝統的な金融政策の「根幹」だと語った。

<粘着的な消費者物価、押し上げ寄与は道半ば>

安達委員は、サービス価格を中心とした「粘着的な消費者物価」が物価全体を下支えする構図が望ましいと指摘。デフレになる前の数値をもとに分析すると、物価2%に対して粘着的な物価の寄与度が1.3から1.5%程度必要だが、現状は「まだ1%を割る程度」と指摘した。

植田和男総裁はマイナス金利やYCCの解除の条件として、実質賃金のプラス転換は必ずしも必要ではないとの見方を示している。安達委員は植田総裁の考えに理解を示しつつも、「コロナ禍明けで想定しない動きを内外経済が見せている。実質賃金が(マイナス金利解除より)先にプラスになる可能性もある」と話した。

(和田崇彦)

ロイター
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