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インタビュー:日銀のマイナス金利、2%まで可能=岩田一政氏

2016年02月04日(木)18時07分

 2月4日、岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は、ロイターとのインタビューで、日銀が導入したマイナス金利について、マイナス幅は2%程度まで拡大可能との見方を示した。写真は都内で2012年9月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 4日 ロイター] - 岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は4日、ロイターとのインタビューで、日銀が導入したマイナス金利について、マイナス幅は2%程度まで拡大可能との見方を示した。

ただ、それ以上のマイナス金利拡大は、現金への大規模な流出を招くとした。また、次回の追加緩和時に「量」を拡大させれば、日銀の収益悪化につながるため、「金利」あるいは買入国債長期化で対応すべきとの見方を示した。

マイナス金利の効果が日銀の経済・物価見通しにほとんど反映されていない点について、過去に例のない政策だけに政策委員が予測に効果を織り込めなかった可能性を指摘した。

株価や為替が再び不安定な動きとなっており、マイナス金利導入の賞味期限が切れているとの見方もあるが、岩田氏は、何もしなかった場合との比較において、効果は確実にあったとみている。

インタビューの詳細は以下の通り。

──マイナス金利を導入したことで、日銀はいくらでも高い価格で国債を買い入れることができ、「量」の限界説を払しょくできたのか。

「資金供給量の限界は、やはり存在する。それはマイナス金利導入で発生する中央銀行のロスと収益のバランスで決まる」

「日銀が高値で国債を買えば、(額面での)償還時には損失が発生する。欧州中央銀行(ECB)も中央銀行のバランスシートの毀損(きそん)を意識しているもようであり、マイナス金利の幅を0.3%までと決めている。高い価格で買い取ることによるロスを、当座預金金利をマイナスとすることで埋め合わせようということだ」

「国債金利がすでに9年物国債までマイナスとなっている状況を踏まえると、日銀にとって、預金にマイナス金利を付けることによる収益よりも、長期国債をネットで年間80兆円、グロスで120兆円をマイナス金利で買うことによるロスの方が大きいはずだ。いくらでも買えるということにはならない」

──今後の追加緩和は、どのような展開になるとみているか。

「日銀自身は、資金供給量の拡大を無限にできると主張している。だが、国債についてはコストの面でこれ以上買入額を拡大することは難しいと思う。日銀にとってのロスが大きくなる」

    「仮に今後、追加緩和するときの選択は、基本的にはマイナス金利の幅を広げる、さらに国債は、より長いものを買うということになりそうだ」

    「金利のマイナス幅をどこまで下げられるかという問題だが、欧州でもどこまで下げられるか気にしている。スウェーデンはマイナス1.1%まで下げている。マイナス金利幅を拡大するほど、当座預金から現金に逃避してしまうのではないか、という懸念があるが、それは現金取引の費用と預金コストとの比較衡量となる」

「現金を持っているコストは、金庫で保管しなければいけないなど種々のコストを合わせると、2%程度だ。マイナス2%程度まで下げても、大規模な逃避は起こらないと予測される。ただ、実際にやってみないとわからない」

「当座預金から現金通貨への大規模な流出を防ごうと思えば、現金通貨にマイナス金利を付けるという、さらに進んだレジームの転換になるが、そこはいろいろな環境整備が必要だと思う。そのうち、その問題が政策課題として浮上してくると思う」

──今回のマイナス金利導入は物価や経済に効果があるなら、なぜ日銀の展望リポートにおいて、従来と見通し数値が変わらなかったのか。

「特に今回は、マイナス金利という大きな変化があった。このため、将来の金利パスを描くことが難しい。決定会合までは何も決まっていないので、各委員が政策変更を想定して経済の予測を立てる際、効果がどの程度あるか予測に織り込むことは、マイナス金利が過去に経験がないこともあって、困難であったと思われる」

──株や為替は不安定な動きが続いているが、金融市場には一定の効果があったのか。

「金融市場には明らかに効果があった。今回の場合は、イールドカーブの下がり方は極めてスムーズであった。現実に預金金利も住宅ローン金利も低下した」

「株と為替についての不安定性については、ひとつは中国を中心とする新興国の経済成長率の減速と企業部門の債務問題。もうひとつはハイイールドボンドの価格の暴落。特にエネルギー関連だ」

「米国のシェール産業では、多くのベンチャー企業がハイイールドボンドで資金調達しており、原油価格がここまで下がると、採算が合わずに、最終的にはデフォルトまで追い込まれる可能性が高い」

「しかもハイイールドボンドの市場規模が、1.7兆ドルある。1.4兆ドルのサブプライムローンの規模を上回る。価格暴落で最終的にはファイアーセールが起きるということを市場は非常にナーバスにみているということだと思う。原油価格に敏感になっているのはそういう事情がある」

*内容を追加しました。

(中川泉 伊藤純夫 スタンレー・ホワイト 編集:田巻一彦)

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