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生保が外債投資に慎重姿勢、急速なドル高で

2015年05月28日(木)17時19分

 5月28日、足元で急速に進む対ドルでの円安が生命保険会社の運用に影響を及ぼしている。3月撮影(2015年 ロイター/Sergio Perez)

[東京 28日 ロイター] - 足元で急速に進む対ドルでの円安が生命保険会社の運用に影響を及ぼしている。外債の利息収入が円建ての収益を押し上げるが、新規投資のタイミングによっては、将来の円高時に資産の価値が目減りしてしまうリスクもある。各社は引き続き外債投資は拡大するとしつつも、為替の動きを見極める方針だ。

「円安が進んでいる状況では、(為替変動リスクに対するヘッジのない)オープン外債を買い進めるのは控えざるを得ない」。日本生命保険の児島一裕常務執行役員は28日の決算会見の場で、最近のドル円の動きについて聞かれ、こう答えた。

日銀の大規模金融緩和を受け、国内金利は低下、日生をはじめとする生保各社はこれまでの運用の中心だった国債では契約者に約束した利回りを確保するのが困難になったため、より高い利回りが見込める外債への投資を増やしてきた。

保有しているドル建ての資産からの収益という面では足元のドル高・円安は追い風だ。28日に決算を発表した日生、明治安田生命、住友生命とも外国債券や株の利息、配当金が円安によって押し上げられ、全体の利益をけん引した。住生においては、2001年度決算での開示を始めて以来、初めて契約者へ約束した利回りに運用利回りが届かない逆ざやを解消した。

「今期も引き続き、国内金利は低水準で推移する可能性が高く、超長期国債への投資は最小限にし、外国債への投資を拡大する」(住友生命の古河久人常務執行役員)と生保業界の国債依存からの脱却の動きは続きそうだ。

各社とも現在のドル高・円安の動きが一方的に進むとはみていない。明治安田生命の荒谷雅夫常務執行役は「円高の局面を見極めつつ、オープン外債中心に投資していきたい。今年度は金利上昇のなかヘッジコストの問題もあるので、計画通り、オープン中心につみあげたい」としている。

ただ、ドル建て資産については、投資タイミングにおいてドル円相場の動きにより神経質にならざるを得ない状況だ。明治安田は、今年度のドル円の想定レートについて、期初に設定した年度末120円は据え置いたものの、年間のレンジを116─123円から118─125円に変更した。

国債から米国債を中心とした外債へのシフトに続き、さらに「米国以外のところで割安なところを見つけに行く」(日生の佐藤和夫財務企画部長)という動きも加速しそうだ。

(浦中 大我 和田 崇彦)

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