コラム

政治家を育てる質問

2012年12月24日(月)00時12分

 12月16日の衆議院選挙投票日。テレビ東京の開票特番「池上彰の総選挙ライブ」を担当しました。

 放送中から思わぬ反響をいただき、テレビ東京にはいまも再放送やDVDの発売を求める声が寄せられているそうです。

 テレビ東京の人たちはもちろんのこと、外部スタッフが総力を挙げて制作・放送したものですから、当然の評価とはいえ、その一翼を担った私も嬉しく思います。

 いつも「いい質問ですね」が口癖の私としては、視聴者に「いい質問ですね」と言ってもらえる内容を目指したからです。

 ただ、党首や候補者への私のインタビューは、ジャーナリストとして当然のことをしたまでで、これに関する評価は面映ゆいものがあります。

 というのも、たとえばアメリカのテレビの政治番組なら、政治家に対しての容赦ない切り込み、突っ込みは当然のことだからです。

 日本なら「失礼な質問」に当たるようなことでも、平然として質問をしますし、質問を受けた側も、怒ることなく(怒ったら負けですから)、見事に答えます。そんな当然のことをやってみたに過ぎないのです。

 私の質問に対する政治家各氏の反応はさまざまでした。怒り出す人、論点をずらして反論を試みる人、他党の例を出して誤魔化そうとする人、絶句する人----。期せずして政治家の性格やレベルが浮き彫りになりました。

 こうしたインタビューが評価されるということは、逆に言えば、これまでの政治番組や選挙特番が、政治家に対して、厳しい質問をしてこなかっただけなのではないでしょうか。

「当選おめでとうございます。いまのお気持ちは?」レベルの質問をしていては、政治家の答えも容易に予想できます。聞かずもがなの質問。それでは「いい質問」ではないのです。

 まして、政治家に質問を投げかける側が、政治の勉強をしていなかったりするようでは、本質を引き出すことはできません。

 いまの日本の政治家に関しては、その質が低いのではないかと批判されます。それはその通りなのですが、政治家と真剣勝負をしてこなかった日本の政治ジャーナリズムにも責任があるのだと思います。

 なれあいの質問、返事が容易に予想できる質問ばかりを投げかけていては、政治家は緊張することがありません。自分を高めていこうという意欲をかき立てることもありません。

 まずは、政治報道に関わるジャーナリストが、「いい質問」を鍛え上げること。日本の政治を立て直すためには、ここから始めてはいかがでしょうか。

 政治家を育てるような質問を考えるのです。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

ニュース速報

ビジネス

自動走行やドローン、技術革新が阻害されない環境整備

ワールド

金正男氏殺害、死因なお特定できず=マレーシア当局

ワールド

ロヒンギャ問題の平和的解決を、バングラデシュ外相が

ワールド

豪メルボルンで小型機が商業施設に墜落、5人死亡

MAGAZINE

特集:北朝鮮 暗殺の地政学

2017-2・28号(2/21発売)

異国の地マレーシアで殺害された金正男──。その死の背景には北朝鮮をめぐる地政学の変化があった

人気ランキング

  • 1

    金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材

  • 2

    金正男暗殺事件、マレーシア首相が北朝鮮を暗に批判 対立が鮮明に

  • 3

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 4

    日本が危ない!? 福島原発の放射能フェイクニュース…

  • 5

    金正男暗殺は10名が関与、4人は国外へ 現地警察が初…

  • 6

    海上自衛隊、18年度から4年間で新型護衛艦8隻建造へ

  • 7

    金正男の暗殺事件で北朝鮮の男を逮捕 謎の男の正体…

  • 8

    今さら聞けない、円高になると日経平均が下がる理由

  • 9

    金正男氏を「暗殺者に売った」のは誰か

  • 10

    トランプ「メディアは国民の敵」、独裁につながる=…

  • 1

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 2

    金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材

  • 3

    金正男クアラルンプール暗殺 北朝鮮は5年前から機会を狙っていた

  • 4

    北朝鮮独裁者、「身内殺し」の系譜

  • 5

    金正男の暗殺事件で北朝鮮の男を逮捕 謎の男の正体…

  • 6

    「線路立ち入りで書類送検」が他人事でなくなる侵入…

  • 7

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 8

    海上自衛隊、18年度から4年間で新型護衛艦8隻建造へ

  • 9

    一般市民まで脅し合う、不信に満ちた中国の脅迫社会

  • 10

    南シナ海、米中戦争を起こさず中国を封じ込める法

  • 1

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 2

    トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデターもあり

  • 3

    金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材

  • 4

    日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

  • 5

    東芝が事実上の解体へ、なぜこうなったのか?

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    ドナルド・トランプ第45代米国大統領、就任演説全文…

  • 8

    マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の…

  • 9

    トランプ、入国制限に反対の司法長官代行を1時間後…

  • 10

    アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない

グローバル人材を目指す

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「日本の新しいモノづくり」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 臨時増刊

世界がわかる国際情勢入門

絶賛発売中!