コラム

韓国クレーンゲーム大ブームが思わぬ方向へ 何が問題に?

2017年05月31日(水)17時02分

ゲーム産業振興に関する法律によりゲームセンターの運営時間は朝9時から夜12時までで、18歳未満は夜10時までしか入場できないことになっているが、クレーンゲームばかりを置いてあるゲームセンターは、ほとんどの場合24時間無人で運営されているため、深夜時間帯の青少年の出入りを制限できないことを警察は問題にしている。同じくゲーム産業振興に関する法律により、景品は1個5000ウォン相当の品までという決まりがあるが、ドローンやドライブレコーダーといった高価な景品をクレーンゲームの中に入れているゲームセンターもある。

それに予想もしなかった問題も発生した。韓国大田市では、たった2時間でクレーンゲームのすべてのぬいぐるみ約200個をキャッチされてしまったゲームセンターの社長が、客を窃盗と詐欺の容疑で訴えた事件もあった。ネットでは「機械を壊したわけでもなく、ちゃんと利用料を払ってゲームをして景品としてもらったのだから窃盗ではないはず」というコメントが殺到した。警察の判断も同じで、「クレーンゲーム機のコツをつかんで他の客よりたくさんぬいぐるみをキャッチしたとしても、それがクレーンゲームのルールを本質的に変えるものではなく、機械を誤作動させたわけでもない。利用料を払い正当に取得しているから問題ない」という結論になった。


2時間で200個ゲット!? ゴミ袋に沢山のぬいぐるみを入れる姿は確かに怪しいが......

この事件は問題になった客本人が記事のコメント欄に投稿、「このゲームセンターでは1万ウォン当たり12回クレーンゲームをプレイできるようになっていた。1万ウォンを払って3〜8回ほどキャッチに成功、その繰り返しで、2時間で60万ウォンも使った。私はクレーンゲームが好きなだけで詐欺ではない。ここまで上達するのにどれだけお金を使ったことか。クレーンゲームってなかなかやめられないですよね」と嘆いていた。

クレーンゲームを楽しむ人が急増し達人も増えてくると、あちこちのゲームセンターでこの事件と似たようなことが起きるだろう。それにやりすぎも問題である。2000年代中盤オンラインゲーム中毒で過労死したり引きこもりになったりする人が増えて社会問題になった韓国だけに、クレーンゲームブームも心配になってしまう。今度はクレーンゲーム中毒が広がらないよう対策を講じたいものである。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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