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ノーベル化学賞の北川進氏、生理学・医学賞の坂口志文氏...その研究成果と科学的意義、一般社会にとっての恩恵とは?
天然にある固体は「原子やイオンが密につまった構造」を持ちます。対して、MOFは「金属と有機物を人工的に組み合わせて作った、結晶内に空間がある構造体」です。
多孔性材料は、脱臭剤に用いられる活性炭や乾燥剤のシリカゲルなどが日常生活でも活用されています。MOFは用いる金属イオンと有機物によって穴の大きさや性質を変えることができるので、「捕らえたいもの」に合わせて自由度高く設計できることが特徴です。
そのため、気体の吸着や貯蔵、環境汚染物質の除去、触媒反応への利用など、様々な形での社会での活用が期待されています。
「気体の時代」にMOFが役に立つ
ロブソン氏は1989年、銅イオンを中心に置き、有機ニトリル化合物を周囲に配位すると、大きな空洞を持つダイヤモンドのような構造の結晶ができることを発表しました。これはMOFの原型となる物質で、ロブソン氏は固体内部の空間には分子やイオンが出入りできることも実験で示しました。けれど、加熱すると構造が崩壊してしまうなど、もろい物質でした。
1990年代から2000年代になると、北川氏とヤギー氏はさらに実用性のあるMOFを開発していきました。北川氏は1997年、コバルトやニッケル、亜鉛などの金属イオンと周囲の有機物を「鍵と鍵穴」のように噛み合う構造を設計することで、孔の中に気体を大量に取り込め、放出する時にも構造体が崩壊しない物質を開発しました。この成果によって、MOFは「多孔性機能材料」として注目されるようになり、ターゲット物質の分離、貯蔵、触媒など社会での応用の基盤となりました。
一方、ヤギー氏は、これまでのMOFは金属イオン1個を節点(ノード)として用いていたところ複数の金属原子からなるクラスター(多核金属ユニット)を利用することで、より強固で多様な連結様式を達成し、MOFの可能性を広げました。
北川氏はストックホルム大学で8日に行われたノーベル賞受賞講演で「現在は固体や液体の化石燃料を資源として使っているが、今後は空気中の炭素や酸素を利用する『気体の時代』が到来する」と予言し、「(その時は)MOFが役に立つ」と語りました。
MOFの社会実装は始まったばかりです。国内では北川氏が科学顧問を務めるアトミス(神戸市)などが取り組んでいます。北川氏は講演で「世界にはMOFに関連するスタートアップが55社ある。低コストで大量に生産する必要がある」と指摘しました。
坂口氏の研究も北川氏の研究も、ある分野の基礎科学で世界初の功績を残したという意味で重要なだけでなく、すぐにも実用化し、私たちの健康や生活に役立つ科学技術の向上にも寄与するものです。
日本の科学研究の現場では、多くの「研究として斬新かつ社会にも役立つ科学の新事実」が日々発見・開発されています。ノーベル賞などの著名な賞の受賞などがないと、一般に報じられる機会は限られているかもしれませんが、「新技術の背景にある科学者の奮闘」にこれからも注目したいですね。
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