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「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親」の本性

2026年4月6日(月)18時25分
印南敦史 (作家、書評家)
『裁判官が見た人間の本性』は不思議な本だった

『裁判官が見た人間の本性』は不思議な本だった L.O.N Dslr Camera-shutterstcok

<トンデモ事件の裏側を明かす本かと思いきや、人間の本質や社会の接点、生と死を扱う異色の「裁判官本」――この先も何度か読むことになる>

『裁判官が見た人間の本性』(瀬木比呂志・著、ちくま新書)という書名だけ見れば、法廷で展開される、常人では想像もつかないようなトンデモ事件の数々が明らかにされているかのように思えるかもしれない。

実際、私も読むまでは、そういう期待をしていたことを否定できない。ところが予想は(いい意味で)見事に外れた。


 この書物は、私すなわち瀬木比呂志という元裁判官が、みずからの経験、体験によりながら、人間とその本性(ほんせい)について考え、語ってゆく書物である。「本性」という言葉は、ここでは、人間の性質や精神の奥深い部分、人間が日常生活で見せている氷山の一角よりも下の部分、すなわち「水面下に存在するより原型的で普通にはみえにくい部分」という意味で用いている。(「プロローグ――裁判官は人間をどう見ているのか」より)

この文章を読んだだけでは、「なるほど、そういうことか」とはならないだろう。端的に言えば、人間の本質的な部分や社会との接点、生と死、哲学、文学や音楽など、広範な領域についてのパーソナルな思いが展開されているのである。
『裁判官が見た人間の本性』
だから、トンデモ系をお望みの方の希望を叶えてくれる可能性は低く、視野を広げない限りは読み続けるのがつらくなる可能性もある。ぶっちゃけ、「難しい本」であることは事実だからだ。

しかし、読み進めながら「これは難解な本だな」と感じさせたと思ったら、「いい具合に屈折していて、しかもユーモアのセンスもいいから、難しいのに楽しめてしまうな」と好意的に思えたりもする。

なんだか、不思議な本なのだ。

表現と視野の幅が広いから、一度読んだらそれで終わり――というタイプではない。

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