「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない中国で成長は実現できるのか

China’s “Smart Authoritarianism”

2026年2月13日(金)08時20分
ジェニファー・リンド (米ダートマス大学准教授)

習の個人支配は毛沢東時代への回帰か

習の個人支配は毛沢東時代への回帰か BRIDGEMAN IMAGESーREUTERS

しかも賢明な権威主義の成功は、指導者が正確な情報を持つかどうかに左右される。政府は統制外にあるメディアを検閲する一方で、国が直面する課題を率直に伝える内部向けメディアに依存している。個人支配が進み、アナリストたちが政府に真実を伝えることを恐れるようになれば、賢明な権威主義は弱体化し、ひいてはイノベーションの力も衰える。

中国の将来を悲観する見方は、この国でイノベーションが成功した要因を、21世紀初頭の規制緩和期にあるとみる。そのため、習による国有部門改革の放棄や個人支配の強化はイノベーションを衰えさせ、ソ連のように技術最前線からの転落を招くとする。この見方によれば、中国でのイノベーションの成功は一時的な例外でしかなく、たとえ「賢明」なものでも権威主義はイノベーション主導の成長と長期的には両立しない。


この見方は正しいのかもしれない。だが自由主義が勝利を宣言する前に、いくつか留意すべき点がある。

第1に中国の例は、権威主義体制でもイノベーションを生み出せることを示している。仮に賢明な権威主義が端境期であったとして、その期間は長く、影響は甚大だ。シンガポールの「端境期」は60年続いている。

中国の場合、たとえ賢明な権威主義が50年で終わるとしても、その間には多くのことが実現している。大国に復帰し、世界の一極体制を終わらせ、東アジアで地域覇権を争う存在となり、アメリカを含む各国の安全保障政策を変えた。さらに賢明な権威主義モデルの魅力や、権威主義的統治技術での主導権、ロシアなどとの関係を通じて、世界的な民主主義後退の流れを後押ししている。

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