爆撃の下で約束された「未来」――ガザで結婚を夢見た若者たちの戦争のリアル
Voices From Behind the Wall
ガザの医療施設もハマスの拠点とされイスラエル軍の攻撃を受けた(24年4月) DAWOUD ABU ALKASーREUTERS
<「壁の外」にいる私たちは、戦争を遠い出来事として眺めがちだ。だが、戦場には確かに生活があり、愛があり、未来を信じて生きる若者たちがいる>
「壁の外」にいる我々は戦争のリアルを見ようとせず、「数」として捉えがちだ。しかし、戦場となっている場所には、どの死者にも名前や顔がある。
そのことを証明するため、線上にいる自分たちの声と主張を、悲しみと不屈の希望を10年前から発信しているガザの若者たちがいる。
彼らが克明につづった、戦争のリアルな「内側」を集めたアンソロジーの邦訳『〈ガザ〉を生きる パレスチナの若者たち10年の手記』(原書房)に収録された手記から抜粋。
痛みに満ちた世界において、愛は障壁を乗り越え、厳しすぎるほど厳しい状況に耐える力をくれる。この真実を私に教えてくれたのは、友人のヒンドと、その生涯の恋人であるマリクだ。魂を愛で結ばれたふたりだが、その旅路は思いもよらない道をたどった。
マリクがヒンドの存在を意識するようになったのは、ふたりがガザ市近郊のザイトゥンに住んでいたころだ。マリクはまたたく間に、ヒンドの大きな瞳と希望に満ちた笑顔のとりこになった。
出会ってからそれほど日が経たないうちに、マリクはヒンドと結婚したいという気持ちを自覚し、伝統に従ってヒンドの父に許しを求めた。婚約そのものは古いやり方にのっとっていたが、ヒンドがマリクに対して抱く愛情は本物だった。ヒンドはマリクの誠実さ、ユーモアのセンス、そして心の広さを愛した。
貧困や働き口がないことなど、様々な困難に見舞われたせいでマリクとヒンドは婚約した後も2年にわたって結婚の日取りを決めることができなかった。その間にも、ふたりの絆はますます深まった。なぜ結婚していないのと聞かれると、まだ準備ができていないから、と答えたものだ。
ヒンドは婚約してまもない日々のことをよく思い出しては、マリクのやさしさと揺るぎない支えについて話してくれた。「私たちはふたりとも、愛というのは『温かな家庭を築こう』という誓いだと思っている。子どもたちがふざけ合い、私が彼の好きな料理を作って、みんなで一緒に食べるような家庭を」
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