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ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000〜16万人に、兵士を「使い捨てる」ロシア軍の残酷物語

War the Russian Way

2024年12月16日(月)13時29分
アレクセイ・コバリョフ(ジャーナリスト)

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戦場に送られた兵士の帰還を求める妻たち(24年2月) GETTY IMAGES

今回のウクライナ戦争で、ロシア軍が空挺部隊や特殊部隊などのエリート部隊を大量投入して一気にケリをつける戦略から、第2次大戦中のような人海戦術に切り替えたのは、22年5月に始まったバフムートの戦いだった。

厄介な部下は前線送り

これはミートグラインダー(肉ひき器)戦術とも呼ばれ、膨大な数の兵士を前線に送り込むことで、ウクライナ軍を疲弊させるとともに、その位置をあぶり出して爆撃する。


この戦術をバフムートで採用したのは、当時ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いていたエフゲニー・プリゴジン(23年8月に死亡)とされる。しかもプリゴジンは、この「使い捨て兵士」に、受刑者と法外な報酬を求める傭兵を充てた。

ロシアは1年間にワグネルの傭兵だけで2万人以上を犠牲にして、廃墟と化したバフムートを制圧した。以来、ミートグラインダー戦術はロシア軍全体に採用され、それとともにロシア兵の死者数は近年の軍事史上例を見ないほど膨らんでいった。

今年2月に展開されたウクライナ東部の町アウディーイウカをめぐる戦いでは、少なくとも1万6000人のロシア兵が命を落とした可能性がある。

ロシア軍の人命軽視の表れは人海戦術だけではない。ウクライナの民間人に対するレイプ、拷問、殺害、誘拐といった蛮行は世界を驚愕させてきた。捕虜となったウクライナ兵の処刑も日常的に行われている。

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