最新記事

英王室

本を読まないヘンリー王子の回顧録は「文学作品としては最高峰」──ゴーストライターの手腕とは?

Prince Harry’s Book Is Just Good Literature

2023年1月31日(火)11時34分
ローラ・ミラー(コラムニスト)

匠の技が光るのはもっと細かな部分だ。立場上、謝罪せざるを得ないようなばかげた行動(仮装パーティーでナチスの扮装をするとか)を描く際には、子供時代に友達と畑に忍び込んでイチゴを盗み食いしたといった、いたずらっ子のエピソードを組み合わせる。映画『ロード・オブ・ザ・リング』のいたずらなホビットたちを彷彿させるような場面を入れるのだ。

モーリンガーは使命を果たしたと言えるだろう。彼の描くヘンリー王子は人好きのする、けっこう単純な男だ。離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚するために退位したエドワード8世は、今でもあの世のどこかで自分の決断について考えているのだろうか、なんて思いにふけることもある。

そして王子と言えば戦う相手のドラゴンが付き物だ。ヘンリーの場合、それはメディア、特にタブロイド紙に雇われたパパラッチたちだった。

他の生き方について学ぶ機会がなかったヘンリーには、同情の念も湧く。マッチョな勇敢さや昔風の男らしさを備えた彼は、中世の王子としてならうまく生きられただろう。

だが現代の王族は、結婚しようがしまいがブリジット・ジョーンズ的だ。ブリジットと同じでメディアの中で働いている。王族は持って生まれた名声を、価値ある大義に対する「世間の意識を向上させる」ために使う広報担当者だ。メディアなくしては成り立たない仕事だが、そのメディアに彼らは苦しめられてもいる。

©2023 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中