最新記事

ロシア経済

16日ドル債務利払い期日、制裁によるデフォルト回避に奔走するロシア

Russia Scrambles to Prevent Defaulting on Debt Payments as Sanctions Bite

2022年3月15日(火)16時46分
イザベル・バン・ブリューゲン

モスクワにあるロシア中央銀行 Maxim Shemetov- REUTERS

<ウクライナへの軍事侵攻に対する制裁で自国の外貨準備を自由に使えなくなったロシアが、16日にドル建て債務の利払い期日を迎える。いったいこれをどう乗り切るつもりか世界が注目している>

ロシアが、デフォルト(債務不履行)を回避しようと奔走している。これは、同国のウクライナへの軍事侵攻を受けて、西側諸国によって科された厳しい経済制裁の結果だ。

ロシア財務省は3月14日の声明で、同国の外貨建て債務の利払いを行うための一時的措置を承認したと発表した。だが声明は同時に、経済制裁の影響で、外貨ではなくルーブルで支払うことを余儀なくされるおそれがあると警告している。

ロシア国債の重要な利払いを3月16日に控え、アントン・シルアノフ財務大臣は「ロシアが公的債務の返済義務を果たせないとの主張は事実に反する」と声明で述べた。「果たすべき返済義務を履行するために必要な資金が、我々にはある」

2月24日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの軍事侵攻を開始すると、西側諸国は即座にロシアに対する厳しい制裁措置を発表した。

制裁には、一部のロシアの銀行をSWIFTから締め出す措置も含まれていた。SWIFTは国際銀行間通信協会の略称で、世界の1万1000を超える金融機関の支払業務を円滑化する国際的な決済ネットワークだ。

SWIFTからの締め出しにより、ロシア中央銀行は、自行が持つ外貨準備を使う能力を著しく阻害された。プーチンおよび大統領と近しい政治家やビジネスマンの多くにも制裁が科され、ルーブルは暴落し、ロシア企業の株価も暴落している。

迫るドル建て債務の利払い期日

英フィナンシャル・タイムズ紙によると、ロシアは16日にドル建て債券について計1億1700万ドルの利払い期限を迎えるという。またこれら債券の発行条件に、ルーブルでの支払いという選択肢は含まれていないとのことだ。

ロシア政府には、30日間の返済猶予期間が設けられているが、仮にデフォルトになれば、ロシアの今後の資金調達は難しくなる。調達できたとしてもそのコストは極めて高くつくことになる。

「我々は、必要不可欠な輸入品の支払いをする必要がある。食料や医薬品など、命に関わる品々だ」。財務大臣のシルアノフは13日、ロシア国営テレビに出演した際にそう述べた。「だが、我々が債務の支払いをする相手はロシアに敵対し、我々の外貨準備の使用を制限する措置を取った。従って我々は、これらの敵対国々に対する債務をルーブルで支払うつもりだ」

「中央銀行および政府の外貨口座の凍結は、人為的なデフォルトを引き起こしたいという西側諸国の意図と解釈できる」とシルアノフは述べた。

13日のシルアノフの発言によると、ロシアが保有する総額6430億ドル相当の外貨準備のうち、西側諸国からの制裁の影響を受けた金額は約3000億ドルにのぼる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中