最新記事

米中関係

新たなフェーズに入った米中関係

The U.S.-China Relationship Has Entered a New Phase

2021年12月7日(火)21時27分
ロバート・マニング(大西洋協議会上級研究員)

最後に、戦略的安定の命運を握る問題がある。アメリカが3750発の核弾頭を保有しているのに対し、中国の核弾頭数は350発にとどまっており、この圧倒的な不均衡から、米中の間でこれまでに軍縮合意が結ばれることはなかった。だが、新たな衝突リスク軽減策に関しては、今後予定されている米中両軍の高官協議が、中国政府の本気度をはかるものとなるだろう。米中の海軍や空軍が、お互いに危険なまでに近い距離で作戦を遂行する中で、偶発的な衝突が戦争を招くのを防ぐため、作戦遂行者の意思疎通を円滑化する新しい合意が早急に必要とされている。米中両国は、互恵的なステップを踏むことで、東シナ海および南シナ海、さらには台湾周辺の海域や空域で繰り広げられてる「チキンレース」の緊張状態を緩和に導くことができるはずだ。

最も緊急性が高いのは、サイバー兵器や対宇宙兵器といったテクノロジーの発達がもたらした核リスクへの対応だ。核司令部が攻撃を受けたり、軍事衛星の制御を奪われるような事態をどう防ぐのか。また極超音速ミサイルの軍拡競争は、双方にとって危機管理を脆弱化させかねない新たな脅威になっている。これらのリスクを軽減させる道は平坦ではなく、時間もかかるとみられるが、中国は、いま述べたような領域、そして米中首脳会談の議題に上がった他のテーマについても、真剣な対話を始める意欲を持っている可能性がある。そうした意欲は、米中が競争的に共存する枠組みが成立するかを示す試金石となるだろう。
(後半翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の

ビジネス

欧州外為市場=ドル下落、米雇用悪化を警戒

ビジネス

スイス、週内にも米と関税引き下げで合意の可能性=関

ワールド

トルコ検察、イスタンブール市長に懲役2000年求刑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 10
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中