最新記事

中国

温家宝の投稿はなぜ消えたのか?

2021年5月5日(水)13時42分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

となると、この「応該」は「今はそうでないが、こうあるべきだ」という「現状否定」を示唆することになる。

社会に責任を持っていない巷の若者が発する言葉なら、まあスルーしてしまうところかもしれないが、「中国共産党を代表する中共中央政治局常務委員会委員(チャイナ・ナイン)の党序列3位にあった国務院総理」の発言としては「党への責任感に欠け」、中国共産党党員に対する数々の条例にも抵触する。

党員権利保障条例「異議は党内で議論せよ」に違反

温家宝が国務院総理に選ばれた翌年の2004年9月22日に「中国共産党党員権利保障条例」が発布された。温家宝は党内序列3位のチャイナ・ナインとして、この条例を審議し(2004年9月9日)、9月22日に批准することに署名している。自分自身が当時の胡錦濤中共中央総書記・国家主席とともに審議議決した条例だ。

その第16条に何と書いてあるか(以下、概要)。

第16条: 党員は、党内で異論を唱える権利を有する。党の決議や政策に対して異議がある場合は、党の上位組織、さらには中共中央に反映させる権利を有する。但し党員は、中央の決定と一致しない意見を公けの場で公開発表してはならない。

つまり「党内であるならば、いくらでも異なる意見を申し立て論議してもいいが、党外に、党と異なる意見を公開発表してはならない」と厳重に書いてある。これは2020年12月25日、中共中央においてさらに修正され、改めて通知を発布している。

中国共産党紀律処分条例「妄議中央大政方針」に違反

この「厳重さ」は、中国共産党紀律処分条例において、さらに極まっている。

本条例はまさに温家宝が国務院総理に就任した2002年の12月に、中共中央が発布したもので、「中国共産党規約」に基づいて制定された党内規定で、中国共産党員の言動を強く縛るものである。

習近平政権になった2015年10月22日に改めて新修訂「中国共産党紀律処分条例」として発布された。

その第四十六条に以下の規定がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国務長官、週内にもイスラエル訪問=報道

ワールド

ウクライナ和平へ12項目提案、欧州 現戦線維持で=

ワールド

トランプ氏、中国主席との会談実現しない可能性に言及

ワールド

ロの外交への意欲後退、トマホーク供与巡る決定欠如で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中