最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙、敗残のトランプを待ち構える訴訟の山 検察による刑事捜査も

2020年11月13日(金)19時00分

2017年1月の就任以来、ドナルド・トランプ大統領の周囲では、民事訴訟や刑事捜査が相次いできた。写真は5日、ホワイトハウスで会見を終えたトランプ氏(2020年 ロイター/Carlos Barria)

2017年1月の就任以来、ドナルド・トランプ大統領の周囲では、民事訴訟や刑事捜査が相次いできた。米国内の主要テレビネットワークによれば、7日に民主党ジョー・バイデン候補が大統領選に勝利したことで、トランプ氏が抱える司法面でのトラブルはいっそう深刻になる可能性が高い、と複数の元検察官が語っている。

トランプ氏が1月に退任すれば、米国法のもとで現職大統領に与えられている保護を失うことになるからだ。

退任に伴ってトランプ氏を悩ませると思われる訴訟及び刑事捜査をいくつか見ていこう。

ニューヨーク州検察による捜査

ニューヨーク州法の執行に当たるマンハッタン地区検事長サイラス・バンス氏は、2年以上にわたり、トランプ氏及びトランプ・オーガナイゼーションに対する刑事捜査を進めてきた。

捜査は当初、トランプ氏の元弁護士で自称「揉み消し役」であるマイケル・コーエン氏が、2016年の大統領選の前に、トランプ氏と性的関係があったと称する2人の女性に支払ったとされる口止め料をめぐるものだった。大統領自身はそうした関係があったことを否定している。

だが民主党員のバンス氏は最近裁判所に提出した文書のなかで、現在では捜査の対象が広がっており、銀行取引・税務・保険関連の詐欺行為、事業記録の改竄が焦点になる可能性があると示唆している。

トランプ氏は、バンス氏の主張は政治的な動機による嫌がらせだとしている。

この事件が関心を集めたのは、バンス氏がトランプ氏の8年間にわたる納税申告書を入手しようとしたからだ。連邦最高裁は7月、納税申告書の非開示を求めるトランプ氏の訴えを退けた。同時に、大統領が在職中でも州による刑事捜査を免れるわけではないものの、バンス氏による召喚状に対して別の対抗措置は可能だとした。

法律専門家によれば、バンス氏は最終的にトランプ氏の財務記録を取得することに成功する可能性が高いという。

米司法省は、現職大統領を訴追することはできないと述べている。バンス氏は連邦検察官ではないため、この方針には縛られないものの、元ニューヨーク州検察官のハリー・サンディック氏によれば、この事件が合衆国憲法に抵触する懸念が残るため、バンス検察官はトランプ氏の訴追を躊躇している可能性があるという。

「トランプ氏が退任すれば、こうした懸念も消滅する」とサンディック氏は言う。

ブラウン大学のコーリー・ブレットシュナイダー教授(政治学)は、この捜査がトランプ氏にとって脅威となっていると話している。

「検察側が召喚状を発行し、連邦最高裁に至るまで、その有効性を認めさせたことは、この件が大統領に対する非常に深刻な刑事捜査であることを示している」とブレットシュナイダー教授は言う。

司法省による捜査の可能性も

トランプ氏が、新たに就任する司法長官の指揮の下、司法省による刑事訴追に直面する可能性もある。

一部の法律専門家は、トランプ氏が連邦所得税の脱税容疑に問われる可能性があると話している。ニューヨーク・タイムズ紙はトランプ氏が2016年、2017年に納めた連邦所得税がわずか750ドル(約7万7600円)だったと報じている。

ドーシー&ウィットニー法律事務所に所属する弁護士で元連邦検察官のニック・エイカーマン氏は、「ニューヨーク・タイムズ紙の報道など、あらゆる種類の脱税の兆候が見られる」と話す。

ただしエイカーマン氏は、あらゆる証拠を目にするまでは確実なことを知るのは不可能だとも警告している。

トランプ氏はニューヨーク・タイムズ紙の報道を否定しており、これまで数百万ドルもの税金を納めてきたが、減価償却や税額控除の恩恵も受けているとツイッターに投稿した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月ブラジル消費者物価、予想より伸び鈍化 年明け

ワールド

ベネズエラ軍、米軍の攻撃あればゲリラ的に抵抗へ=関

ワールド

メキシコ、砂糖輸入に新たな関税導入 値下がりや供給

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、主力株高い SBGは大幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中