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2020米大統領選

アメリカ大統領選、早くも空前の訴訟合戦に 激戦州の勝敗も左右か

2020年9月29日(火)11時15分

今月になって裁判所が下した幾つかの判決は、大半が上訴されそうだが、現時点では民主党側が勝利を手にした。ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ノースカロライナといったいわゆる激戦州では、11月3日の投票日当日までに送られた用紙であれば、選管当局はそれ以降に到着した分も、集計することができるようになった。

テキサス、ペンシルベニア、ミシガンの各州で争われている複数の訴訟は、これらの州の選挙結果に重大な影響を及ぼす可能性がある。

例えばペンシルベニア州の場合、同州の最高裁がドロップボックスの設置制限や遅れて到着した用紙を無効とすることを認めなかったため、共和党側は連邦最高裁に判断を求める意向だ。トランプ氏陣営は、この問題で別途、連邦裁判所に提訴する手続きも進めている。

また、テキサス州では、共和党のパクストン同州司法長官が大都市ヒューストンなどを含むハリス郡当局を訴え、全有権者に向けた不在者投票の申請書送付差し止めを裁判所に要請した。

共和党側が勝訴した訴訟もある。連邦控訴裁判所(高裁)はフロリダ州で以前に重い犯罪を犯したことのある数十万人の投票阻止につながる判断を下した。

テキサス州では体が不自由であるなど、妥当な理由がなくても郵便投票できる人は65歳以上の高齢者に限定するという司法の判断が示され、全ての有権者に郵便投票の権利を付与しようという民主党の出鼻はくじかれた。

再び最高裁が判断も

こうした猛烈な訴訟合戦は、11月3日の後にどんな展開が待っているかを予告している。つまり有効票の算定を巡って、新たな対立が起きてもおかしくない。

既に両陣営とも、弁護士軍団をそろえて準備万端の態勢だ。バイデン氏の陣営は、数百人の弁護士を抱え込むとともに、かつて合衆国訟務長官だったドナルド・ベリッリ氏やウォルター・デリンジャー氏、元司法長官のエリック・ホルダー氏などの大物を顧問に迎えた。

今年に入って左派グループのために多くの選挙関連訴訟をとりまとめてきたマーク・エリアス氏は、州ごとの有権者保護に専念するチームを率いている。

トランプ氏の陣営は、全有権者による郵便投票実施を計画しているネバダやニュージャージーなどの州に対して、異議を申し立てる訴えを起こした。

民主党内では、先日死去した連邦最高裁のリベラル派判事ギンズバーグ氏の後任を共和党が大統領選前に補充することに成功すれば、どんな訴訟も最終的に最高裁でトランプ氏が勝訴する事態になるのではないかとの懸念が出ている。

2000年の大統領選では、フロリダ州の再集計に連邦最高裁がストップをかけたことで、最終的に共和党のジョージ・W・ブッシュ氏が民主党のアル・ゴア氏に勝利した。

大統領選の結果を連邦最高裁が決したのはこれまで、この時しかない。トランプ氏は23日、大統領選の結果が結局最高裁の判断に委ねられるという自身の想定を理由に、ギンズバーグ氏の後任を就任させたいと明言した。

ただ、ロヨラ大学のレビット教授は、裁判官が証拠の裏付けがない異議申し立てを却下すると引き続き信じていると話す。「数百ドルと弁護士1人がいれば訴訟を起こせるし、それはしばしばメッセージを送る上で有効な手段になり得る」と指摘しながらも、究極のところ「世論という名の法廷には、証拠は必要でなくても、法の番人たちは証拠を要求するものだ」と語った。

(Joseph Ax記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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