最新記事

感染症対策

中国、治験終了前のコロナワクチンを数万人に接種 「副作用はない」というが懸念される安全性

2020年9月18日(金)17時44分

中国は新型コロナウイルスのワクチン開発で、臨床試験(治験)が完了していない段階で市民数万人に緊急接種する方法を採用している。写真はカンシノ・バイオロジクスなどが開発中のワクチン。武漢で3月撮影。(2020年 ロイター/China Daily)

中国は新型コロナウイルスのワクチン開発で、臨床試験(治験)が完了していない段階で市民数万人に緊急接種する方法を採用している。供給を確保したい外国からも関心が寄せられているが、専門家の間では安全性を懸念する声が出ている。

中国は7月、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物技術(CNBG)および、バイオ医薬品シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)が開発するワクチン3種類について緊急使用計画を開始。カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)<6185.HK>が4種類目のワクチンを開発中で、6月に中国軍での使用が認められた。

緊急接種の対象は医療、運輸、食品市場などの労働者。政府は接種件数などの公式データを公表していない。


しかしCNBGとシノバックは、少なくとも数万人が接種を受けたことを確認。CNBGはまた、同社が数十万錠を提供したとしている。同社のワクチンの1つは、1人当たり2、3回接種する必要がある。

中国は公的な職や高いポストに就く人々が率先して接種を受けることで、市民の支持を醸成しようとしている。シノバックとシノファームの最高経営責任者(CEO)や軍の調査責任者などが、早い段階で接種を受けた。

中国疾病予防コントロールセンター(CCDC)の安全性責任者、Guizhen Wu氏は今週、4月に接種を受けたと明かした。同氏は国営テレビで「今のところ、ワクチン接種を受けた人の中で新型コロナの症状が出た人はいない。今のところ(接種プログラムは)非常にうまくいっており、副作用は見られない」と述べ、早ければ11月にも一部ワクチンが実用化できる可能性を示した。

CNBGも先週、接種後にリスクの高い国や地域を訪れた数万人の中から、感染者は1人も出ていないと説明。「明らかな副作用も皆無だ」としている。

安全性への懸念

多くの西側諸国では、専門家が治験完了前のワクチンの緊急使用に反対している。長期的な有効性と副作用の可能性が把握できないからだ。

米ジョンズ・ホプキンス大学のワクチン研究家アンナ・ダービン氏は中国の緊急使用プログラムについて、「コントロールグループ」と比較対照する標準的な治験を行わなければ効果の判断は不可能だとし、「極めて問題が多い」と話した。

中国以外で実験段階のワクチン使用を認めている国はわずかで、その1つがロシアだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、AI・エネルギーに700億ドル投資へ 

ビジネス

英中銀総裁「不確実性が成長を圧迫」、市場混乱リスク

ビジネス

米関税措置、国内雇用0.2%減 実質所得も減少=S

ワールド

ゼレンスキー氏、スビリデンコ第1副首相を新首相に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中