最新記事

教育

日本の教師の仕事への「自信」が特異的に低い理由

2020年4月15日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

職務と言われれば教員なら当然、授業をイメージするが…… gpointstudio/iStock.

<勤務時間の半分以上を、部活指導や事務作業など授業以外の雑多な業務に費やしていることが要因か>

OECD(経済開発協力機構)は5年ごとに、国際教員調査「TALIS」を実施している。各加盟国の教員の労働実態や意識を調べるもので、先日2018年調査の結果レポートの第2弾が公表された。

国別の統計表が出ているが、他国とかけ離れた日本の値がちらほら見られる。例えば、以下の項目に対する回答だ。

「I am satisfied with my performance in this school.」

直訳すると「現勤務校での自分の仕事ぶりに満足している」となる。日本の中学校教員のうち、「とてもそう思う」ないしは「そう思う」と答えた人の割合は49.0%、ほぼ半数だ。この数値に違和感はないが、他国の数値はこれよりずっと高い。アメリカは93.4%、イギリスは91.5%、お隣の韓国は81.5%だ。

日本の子どもの学力水準は高い。ICT(情報通信技術)機器もろくになく、授業以外の雑務も多いという悪条件のなか、日本の教員は本当に頑張っている。週の労働時間と絡めてみると、日本の教員の「哀れ」とも言うべき実態が浮かび上がってくる<図1>。

data200415-chart01.png

日本の教員の労働時間は最も長いが、職務能力への自信は他国と比べて際立って低い。謙虚な回答をしたのかもしれないが、そうした国民性を考慮しても、日本の教員が自信を持てない要因はあるように思う。職務の多くが、専門の授業以外の業務であることだ。

自分の仕事のパフォーマンス、職務遂行能力に自信がないと口にする時、職務としてどういうものをイメージしているのか。教員なら当然「授業」だが、日本の教員は授業以外の雑多な業務を担わされている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中