最新記事

デザイン

その名は「JR」、ニューヨークを巧みに表現した驚きの手法

2017年6月19日(月)12時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『Pen Books 名作の100年 グラフィックの天才たち。』より。JRはこのプロジェクトのため、1年以内に移民してきた16人をストリートで撮影したという。ニューヨーク・タイムズ・マガジンのオンライン版では撮影の過程を視聴できる

<グラフィック・デザインの新時代を切り開く1人、JR。彼は無名の移民を撮影し、巨大な写真を雑誌の表紙にした>

今日、社会・経済のあらゆる面において、デザインの重要性が増している。グラフィック・デザインにどのような力があるのか、知っておいて損はない。

Pen BOOKS 名作の100年 グラフィックの天才たち。』(ペン編集部・編、CCCメディアハウス)では、20世紀の巨匠10人を紹介。歴史を振り返ることでグラフィックに対する理解を深められる。

本書ではさらに、現在活躍中のクリエイターたちにも光を当てている。その1人がJRだ。日本人なら「JR」と聞いて鉄道会社が思い浮かんでしまうかもしれないが、こちらのJRは世界的に注目を集めるストリートアーティストである。

ほかにも、原 研哉氏の「グラフィック論」や、大阪芸術大学・三木 健教授の人気講座"APPLE"などを取り上げた本書から、一部を抜粋し、4回に分けて転載する本シリーズ。第4回は「新時代のグラフィックを切り開く、21世紀のクリエイターたち。」より、JRの手によるニューヨーク・タイムズ・マガジンのプロジェクトを紹介する。

※第1回:この赤い丸がグラフィック・デザインの力、と原研哉は言う
※第2回:「絵文字」を発明したのは、デザイナーでなく哲学者だった
※第3回:戦後日本のグラフィック・デザインをつくった男、亀倉雄策

◇ ◇ ◇

 

JR
アーティスト
パリのメトロでカメラを拾ってから、写真を使ったグラフィティアートの制作をスタート 。モノクロの巨大なポートレートを建築物の壁などに貼るという形式で有名になり、いまでは世界各国に活動の場を広げている。

NYの街を巧みに表現した、驚きの手法。

 およそ310万人の移民が住んでいるニューヨーク。その中のひとり、アゼルバイジャン出身のエルマー・アリエヴは幸運なことにグリーンカードが当選して、この街へやってきた。ブルックリンのレストランでウェイターをしている20歳の青年がアーティストのJRに出会ったのは2015年春のこと。その後まもなく、彼が雑誌『ニューヨークタイムズマガジン』の表紙になるとは思ってもみなかったことだろう。

"Walking New York"号(2015年4月発行)に関わったアソシエート・フォトエディターのクリスティン・ウォルシュは、「彼はその頃、移民に関するプロジェクトを手がけていたので、『最近ニューヨークに移民してきた人の写真を、巨大にプリントして繁華街の地面に貼り、上空から撮影したらどうか?』というアイデアが出てきました」と言う。

 その後、チームは地上と上空の両方から15カ所にも及ぶロケーションハンティングを行い、23丁目と5番街の交差点付近にあるフラットアイアンプラザで撮影を敢行。

「写真のシェイプがぴったりとはまる地形であること、そしてヘリコプターで真上から撮影できることなどが決め手となりました。加えてイエローキャブや横断歩道、自転車用レーンなどの配置がニューヨークらしさを表しているのも理由です」

 作品は全長約46m。62のパーツに分かれた写真は、まるで巨大パズルをつくるような手順で早朝4時から設置が開始され、約3時間半後に完成した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

超長期国債中心に円債積み増し、リスク削減で国内株圧

ビジネス

独総合PMI、4月速報50.5 10カ月ぶりに50

ビジネス

仏ルノー、第1四半期は金融事業好調で増収 通年予想

ビジネス

英財政赤字、昨年度は1207億ポンド 公式予測上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中